「アンカリング効果」を意識する
そこで上司は、週次ミーティングで、部下の1週間の仕事の確認と段取りの計画を決める際などに働きかけましょう。当面する仕事の経験から何を学ぶのか。そのためには、どう行動するのがよいか、問いかけるとよいでしょう。部下自身が「この仕事からは、こうした方法で、この学びを得てみよう」と自分の心の中に留め置くことで、仕事の経験から自覚的に学ぶ構えができるのです。
これは、印象的な情報を意識させることで行動に影響を与える「アンカリング」という心理学の概念にあたります。アンカーとは「錨(いかり)」の意味。錨を海底に下ろし、その範囲で動く船になぞらえて、一定の印象的な情報や数値などを基準や目標として認知することで、その後の行動に影響を与える効果のことです。
ぜひ、部下育成の方法として、活用してみてください。
では、経験から学ぶ習慣を身に着けさせるための留意点には、さらにどのようなものがあるか。<「今の仕事経験で成長できる気がしません」と訴える部下...どう育てる?【上司力を鍛えるケーススタディ CASE32後編)】(前川孝雄)>で解説していきましょう。
※「上司力」マネジメントの考え方と実践手法についてより詳しく知りたい方は、拙著『部下全員が活躍する上司力 5つのステップ』(FeelWorks、2023年3月)をご参照ください。
※「上司力」は株式会社FeelWorksの登録商標です。
【プロフィール】
前川 孝雄(まえかわ・たかお)
株式会社FeelWorks代表取締役
青山学院大学兼任講師、情報経営イノベーション専門職大学客員教授
人を育て活かす「上司力」提唱の第一人者。リクルートを経て、2008年に管理職・リーダー育成・研修企業FeelWorksを創業。「日本の上司を元気にする」をビジョンに掲げ、「上司力研修」「50代からの働き方研修」「eラーニング・上司と部下が一緒に学ぶ パワハラ予防講座」「新入社員のはたらく心得」などで、400社以上を支援。2011年から青山学院大学兼任講師。2017年働きがい創造研究所設立。情報経営イノベーション専門職大学客員教授、一般社団法人 企業研究会 研究協力委員、一般社団法人 ウーマンエンパワー協会 理事なども兼職。連載や講演活動も多数。
著書は『50歳からの逆転キャリア戦略』(PHP研究所)、『「働きがいあふれる」チームのつくり方』(ベストセラーズ)、『コロナ氷河期』(扶桑社)、『50歳からの幸せな独立戦略』(PHP研究所)、『本物の上司力~「役割」に徹すればマネジメントはうまくいく』(大和出版)、『人を活かす経営の新常識』(FeelWorks)、『50歳からの人生が変わる 痛快! 「学び」戦略』(PHP研究所)等30冊以上。最新刊は『部下全員が活躍する上司力 5つのステップ』(FeelWorks、2023年3月)。