世界経済悪化の中、日本だけ日が昇るのは「偽りの夜明け」?
一方、大企業の製造業と非製造業の間で、今後の見通しについて明暗が分かれたことが、日本経済の先行きの暗い材料だ、と指摘するのが、野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏だ。
木内氏はリポート「事前予想を上回る6月短観も、日本経済の改善は『偽りの夜明け』か:日銀は物価上昇圧力の低下に注目」(7月3日付)のなかで、
「非製造業の先行きDIの悪化は、景気のけん引役が非製造業から製造業にシフトしている可能性を示唆し、海外経済が悪化して製造業に調整圧力がかかる局面では、日本経済がけん引役を失うことを意味する」
と危惧する。
そして、現在、日本株が大幅上昇し、今回の短観で日本経済の回復が「改善」方向にあるとされているが、「そうした見方は楽観的過ぎる」として、次のように理由を挙げる。
(1)足もとでは、日本銀行の金融緩和維持が円安、株高を促し、企業の景況感を改善させている面がある。
(2)しかし、円安によって物価上昇圧力が高められ、実質賃金の下落が続いている。金融緩和によって物価上昇率低下がさらに先送りされれば、いよいよ実質賃金下落が本格的な消費抑制につながってくる。
(3)そうなれば、個人消費の影響を大きく受ける非製造業の景況感が悪化し、持ち直し始めたばかりの製造業の足を引っ張る。実際、すでに日本銀行の実質消費活動指数の4月の水準は、1~3月期より落ち込んでいる。
(4)海外に目を向けると、米国、ユーロ圏の製造業PMI(購買担当者景気指数)の最新6月速報値は、好不況の分かれ目である50以下に落ち込んだ【図表3】。海外経済悪化の影響を受け、日本銀行の実質輸出指数も昨年10~12月期から下落基調にあり、最新5月の数値は前月比マイナス3.5%と大幅な下落となった。
木内氏はこう結んでいる。
「主な輸出先である中国および欧米経済に下振れリスクが高まるなか、日本の輸出環境には下振れリスクが高まっている。輸出が悪化する中でも個人消費を中心とした内需が主導する形で、日本経済が改善を続けることは難しい。
短観によってさらに強まる可能性がある国内経済の改善期待は、『偽りの夜明け(False Dawn)』に終わることを覚悟する必要があるだろう」
(福田和郎)