大幅な設備投資、経済成長の大きなけん引役が期待される
こうしたデータをエコノミストはどう見ているのか。
日本経済新聞(7月3日付)「大企業製造業の景況感、7四半期ぶり改善 日銀6月短観」という記事に付くThink欄の「ひと口解説コーナー」では、慶應義塾大学総合政策学部の白井さゆり教授(マクロ経済学)が、
「大企業の景況感が足元で、製造業も非製造業も市場見通しよりも改善した点は良かったと思います。一方、3か月先の見通しは製造業が引き続き市場予想よりも強く改善する見通しですが、非製造業はいくぶん悪化を見込んでいます。製造業の見通しは機械類や自動車など幅広く改善が見込まれていますが、非製造業の方は、不動産、建設、情報サービス、宿泊飲食で現在よりいくぶん悪化すると見ているようです」
と説明。つづけて、
「物価の見通しは企業販売価格も一般物価も、いずれも前回調査より上昇率は低下すると見込まれており、世界の傾向と同様に原材料価格が落ち着いたことでインフレは次第に下落していくことが見込まれています。設備投資も堅調で経済動向は緩やかに回復しています」
と、今後に期待をもたせた。
同欄では、第一生命経済研究所首席エコノミストの永濱利廣氏が、設備投資に注目して、こう指摘した。
「6月短観の設備投資計画(日銀)を見ると、『ソフトウェアを含む設備投資額(除く土地投資額)』が全規模合計で、2022年度が前年比プラス9.2%に下方修正された一方で、23年度が同プラス12.4%に上方修正されています。
そこで、これまでの6月短観の設備投資計画と同年度のGDP名目設備投資額の関係を基に、今後の名目設備投資の金額を予測すると、22年度実績の96.7兆円から23年度は103.2兆円にまで拡大する計算となります」
と解説した。そして、
「これが実現すれば、実に1991年度の102.7兆円以来の水準まで日本の設備投資が拡大することになり、今年度の経済成長率の大きなけん引役になることが期待されます」
と、やはり今後に期待できるとした。