資本金「1億円以上」と「5000万円以上1億円未満」は、大幅な転出超過に転じる
本社の移転を資本金別でみると、7区分のすべての規模で転出超過となった。転出入率は、「1百万円未満」(マイナス18.6%)を除く区分で、マイナス20.0%未満となった。
コロナ禍以前の転出入率をみると、資本金「1億円以上」が40.2%、「5000万円以上1億円未満」が13.9%で転入超過だったが、コロナ禍以降は「1億円以上」がマイナス26.4%、「5000万円以上1億円未満」がマイナス21.8%で大幅に転出超過に転じた。
東京商工リサーチは、
「コロナ禍前は、資本金が多い企業が転入超過、資本金が少ない企業が転出超過という傾向が見られたが、コロナ禍以降はそういった傾向はみられず、資本金の規模にかかわらず大都市から郊外へ移転する動きが強かった」
と指摘する。
さらに、本社移転前と移転後の売上高が判明した企業(2017~20年2964社、20~23年3225社)の売上高の推移を調べたところ、コロナ禍前、コロナ禍以降ともに、転入企業の増収企業率が転出した企業を上回ったことがわかった。
コロナ禍(20~23年)以降は転入・転出どちらも増収企業率は低下。特に転出した企業の58.03%が減収となった。コロナ禍で事業環境が大きく変化したことで業績が低迷した企業が多く、賃料などのランニングコスト抑制が郊外への転出要因になったとみられる。
本格的に経済活動が再開。「アフターコロナ」の段階に入り、低下していた出社が戻りつつある。コロナ禍の「ニューノーマル」な働き方が定着し、社員の流出を防ぐ企業もあれば、対面を重視し原則出社の働き方に戻す企業も増えてきた。
大都市では再開発などで高機能オフィスの供給が相次いでいる。対面重視の企業は交通アクセスなどの利便性が圧倒的に高い大都市への転入が増えるだろう。
「今後、多様な働き方で郊外に移転し人材獲得を重視する企業と、対面重視で原則出社に回帰する企業もあり、業績や生産性向上をどこまで実現できるかで大都市の転出入状況も変わりそうだ」(東京商工リサーチ)。
なお、調査は2017年3月時点、20年3月時点、23年3月時点を、東京商工リサーチの企業データベース(約400万社)で比較。市郡をまたいだ本社および本社機能を移転(東京都区部のみ区をまたいだ移転)した企業を集計、分析した。
東京23区・政令指定都市・人口50万以上の市を「大都市」、その他の市郡を「郊外」と定義している。また、転入超過率は、転入者数から転出者数を差し引いた数の百分比。転入超過率がマイナス0.0%未満の場合は転出超過率を示す。