国立青少年教育振興機構が2023年6月22日に公表した「高校生の進路と職業意識に関する調査」によると、日本の高校生の約7割は、「仕事」「働くこと」のイメージを「生活のため」と感じている。これは、米国・中国・韓国の高校生に比べて圧倒的に多く、「楽しい」とのイメージは最も少ない、という結果だった。
この調査から、将来を担う若者たちの進路や職業などに対する考え方を2回にわたって見ていこう。
将来受けたい教育水準...日本は「大学院希望率」が突出して低く
この調査は、高校生たちの進路と将来の職業に対する考え方について、米国、中国、韓国と同時に実施したもの。調査対象は、日本が28校で有効回答者数4822人、米国は13校1874人、中国は6校3772人、韓国は6校1814人となっている。
まず、「将来受けたい教育水準」については、「4年制大学まで」と回答した者の割合は、日本61.3%で最も高く、次いで、韓国の48.0%となっている。日本は2016年調査でも61.6%と同水準で、4年制大学までと考えている比率に変化は見られない。
残念ながら、「大学院まで」という希望では、米国が2016年43.7%/2022年33.7%、中国が2016年51.7%/2022年43.7%と、「4年生大学まで」と考えている高校生を上回っている。だが、これに対して、日本では大学院までの希望は2016年7.2%/2022年6.5%と、米国、中国を大きく下回っている。(グラフ1)
日本の大学院希望率が突出して低いことについては、阻害している原因を調べ、希望率が高まるように改善していくことが必要だ。
「仕事」「働くこと」に対するイメージ(複数回答)の上位では、何とも悲しいことに、日本では「生活のため」が68.6%で圧倒的に高い。韓国も「生活のため」が1位だが、32.4%となっており、米国では16.3%、中国では17.7%でしかない。
「仕事」「働くこと」に対するイメージは、米国では「やりがい」が55.5%と最も高く、次いで、「楽しい」が34.5%となっている。日本の「楽しい」はわずか18.8%でしかない。(グラフ2)
職業の選択で重要視していること...日本は「仕事の環境」が1位 「在宅勤務」の希望は低く
「職業の選択で重要視していること」(複数回答)では、日本は「仕事の環境」が1位だが、他の3か国は5位となっている。日本が4位の「収入」の項目は、米国と韓国の1位、中国の2位だ。
一方、米国が3位にあげた「福利厚生」は韓国では4位だが、日本は6位、中国は8位となっており、企業側から従業員に示される収入や福利厚生に対する考え方の違いが表れている。(表)
「希望する就業形態、就業地域」で特徴的なのは、在宅勤務・リモートワークが中心となる働き方への希望で、「強く希望する」と回答した割合は、米国・中国・韓国が約15%なのに対し、日本は4.9%となっている。「まあ希望する」を合わせても、日本は27.4%にとどまり、米国の55.5%、中国の48.2%、韓国の61.6%に比べて、極めて低い。
また、「希望する勤務地」では、日本の場合には、東京や大阪など大都会が2012年の34.8%から2022年には29.8%に減少し、一方で、地元の中心都市が24.5%から37.1%に増加している。 この傾向は、米国と中国でも同様だが、韓国だけは大都会が増加して、地元の中心都市が減少している。(グラフ3)
今回は高校生の進学に対する意識や、仕事・働くことに対するイメージ、職業選択に際して重要視するもの、希望する勤務地といった将来の仕事に対する考えを中心に取り上げた。
次回は高校生の自意識、生活に対する意識や社会に対する意識についてを取り上げる。【つづく】
<君たちはどう働くか?【2】 日本の高校生、「今の自分が好き」54.5%、「自分はダメな人間」78.6%...米中韓の比較で際立つ 「自分の国の未来は明るい」わずか32.0%(鷲尾香一)>に続きます。