ビジネスパーソンにとって30代、40代は、上司もいて、部下もいて、あるいは周囲の活躍も気になって...という悩み多き世代ではないでしょうか。
当コラム「その仕事の悩み、こんなふうに考えてみよう。」では、キャリアや生活にまつわる悩みに、組織や人材開発、コーチングに詳しい「ひろ子ママ」が、アドバイスやエールをお送りしていきます。
◆きょうのお悩み
きょうはAさんが、こんな悩みを抱えていらっしゃいました。
先日、日本の「ジェンダーギャップ指数」が146カ国中、125位と過去最低の順位だったというニュースを見ました。「多様性を受け入れよう」「D&Iを推進しよう」と社内でも耳にしますが、直接関わっているわけではないので、いまひとつ自分ごとになっていません。日本の「ジェンダーギャップ指数」に関しても「政治」「経済」となると......身近に感じられません。こんな考えだから日本の数字が低いのかとも思いますが、日常的に何かできることはあるのでしょうか。
4分野のスコアから男女格差を評価する「ジェンダーギャップ指数」
2023年6月に世界経済フォーラムが発表した「ジェンダーギャップ指数報告書」によると、日本は146カ国中125位と、過去最低の結果となりました。
「ジェンダーギャップ指数」とは、「政治」「経済」「教育」「健康」の4分野におけるスコアをもとに男女格差を評価したものです。この調査がスタートした2006年、日本は115位中80位でした。
当時から現在まで日本のスコアはほぼ横ばいなので、順位が下がり続けている状態です。このことからも、日本は他国の男女格差を埋める取り組みに遅れをとっているといえますね。
多様性のある企業のほうが、利益率は高い
たとえば、日本では正社員に女性比率が多い企業ほど、利益率が高いという研究結果も出ているそうです。
それだけに今、多様性を取り入れて企業を強くしようという動きをしている企業も増えてきています。その中で、女性活躍や多様性が重要視されているのが、まさにこれですね。たくさんの異なる考えや価値観、発想からイノベーションが生まれやすいといいます。
◆参考
山本勲 上場企業における女性活用状況と企業業績との関係-企業パネルデータを用いた検証-より(2014年)
多様性を受け入れようというけれど...「ステレオタイプ」はありませんか?
「多様性」というと国籍やマイノリティ(社会的少数者)をイメージして、Aさんのように近くに存在を感じることがないという人もいるのではないでしょうか。「多様性を受け入れよう」というけど、「自分の会社では外国人採用もしていないし関係ないのでは」と。
多様性というのは目に見えるものだけでなく、目に見えないものの中にもあります。特に日本は島国であることや、これまで長く続いた年功序列や終身雇用制度などで「画一的な」働き方が生まれ、「これはこういうものだ」と凝り固まった考え方が根付きやすいとも言われています。
たとえば男女に対して、以下のようなイメージを持っている人もいます。
・男は仕事、女は家事
・男は理系、女は文系
・男は元気、女はしとやか
・男は面白い、女は優しい
このような固定化された考え方を「ステレオタイプ」といいます。私も含めて上記をイメージできてしまうので、必ずしも特別な考え方ではなく、身近にあるものです。
ステレオタイプがあることで、さまざまな分野で「これはこういうものだ」という特定の考えにつながり、それ以外の少数派の考え方は受け入れられない、ということになってしまうのです。つまり、ステレオタイプによって、さまざまな可能性が狭まってしまうのです。
日本の女性管理職比率が低い原因の一つに、私たちの中に男女に対するステレオタイプが根強く残っていることもあると思います。
多様性を受け入れるって、どういうこと?
「外国人と働いたことがないけど、一緒に働く機会があったら受け入れよう」。頭で想像しても、実際に起こっていないので現実味がありません。
さきほどのステレオタイプの話にあったように、固定された考えを持っている人は、いきなり他の考え方や納得できないことを受け入れるのは難しいでしょう。
そこでまずは身近にある自分とは異なる考え方に対して、「自分と違う考え方もあるんだ」「賛成はしないけど、参考にしよう」と考えてみてはいかがでしょうか。
「ジェンダーギャップ指数」に関連する政治や経済というと、自分には身近でないと感じやすいですが、先ほどのステレオタイプの男女のイメージにもあったように、実は誰もが身近に感じる出来事でもあります。
「~こうすべきだ」という固定された考えだけでなく「そんな考え方もあるんだな」と、いろんなタイプの考え方を知ることで、その先に男女間だけでなく、さまざまな格差がなくなっていくのではないでしょうか。
もっとも、世界全体の男女平等が達成されるまで131年かかるそうです......。気が遠くなりそうですが、Aさんも今できることはやっていきましょう。(ひろ子ママ)