社会の課題に対して、自社はどんな役割を担えるか?
共創プロジェクトのポイントをいくつか挙げている。「自組織の利益を増やせるか?」という発想ではなく、「社会の課題に対して、自社はどんな役割を担えるか?」という視点に立つことが重要だという。
そのためには、目的を階層化することを勧めている。「持続可能な社会」「SDGs」などの大目的をプロジェクトの目的にすると、自分ごとになりにくい。
一方、「私が私のためにこれをしたい」という独りよがりの小目的だと、他者の協力が得られない。その中間の「自分たちごろ」にできる目的、ミッションが必要なのだ。また、共通目的の前に、共通課題を深掘りできているかと問うている。
巻き込む相手へのインセンティブは、金銭という有形の報酬に限らない。関係報酬、名誉報酬、情報報酬、権利報酬など無形の報酬があるという指摘も新鮮だ。
著者は同じ属性だけで新しい事業をつくるのは、よくある「協業」だとし、多様な属性で新しい価値をつくることが、これからの「共創」だと説明している。
よりよい社会をつくろうとする個人、企業、機関、行政に有益な「概念」を提案した本である。パーパスモデルをウェブサイト上で簡単に操作できるツールも、本の中で公開している。(渡辺淳悦)
「パーパスモデル 人を巻き込む共創のつくりかた」
吉備友理恵・近藤哲朗著
学芸出版社
2530円(税込)