待ったなしの少子化対策、努力義務負う企業の半数「業務に支障あり」 ネットで怒りの声...「ニッポンつぶす気か」「仕事は子育てのためにあるはず」

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   人口減少が恐ろしい勢いで進み、縮むニッポン! 少子化対策は待ったなしだ。政府は「子育てと仕事の両立支援」のために、在宅勤務の拡大などを企業に義務付けようとしている。

   ところが、東京商工リサーチが2023年6月19日に発表した「2023年『少子化対策』に関するアンケート調査」によると、企業の半数が「業務に支障が出る」と考えていることがわかった。

   ネット上では、こうした企業の姿勢に「次世代の働き手がいなくなってもいいのか!」と怒りの声も巻き起こっている。

  • 「子育てと仕事の両立支援」で企業に努力義務…業務への支障は?(写真はイメージ)
    「子育てと仕事の両立支援」で企業に努力義務…業務への支障は?(写真はイメージ)
  • 「子育てと仕事の両立支援」で企業に努力義務…業務への支障は?(写真はイメージ)

大企業ほど少子化対策が「業務に支障」の理由は?

   厚生労働省は現在、「異次元の少子化対策」の柱の1つとして、「仕事と育児の両立」を支援するために、次の3つを企業の努力義務とする方向で検討作業を進めている。

(1)3歳までの子どもがいる社員が、オンラインで在宅勤務できる仕組みを導入する。
(2)3歳までの子どもがいる社員を対象に、フレックスタイム制を導入する。
(3)現在3歳までの子どもがいる社員が対象の「残業免除権」を、就学前の子どもがいる社員に拡大する。

   育児休業後に復帰しても柔軟に働ける職場環境を整え、希望する数の子どもを持ちやすくするのが狙いだ。厚生労働省では2024年中の育児・介護休業法や関連省令の改正を目指している。

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社員の子育てを「支障」と言わない経営者であってほしい(写真はイメージ)

   こうした政府が進めている「仕事と育児と両立支援」、努力義務を課せられる企業にはどんな影響を与えるのだろうか。

   全国の5283社を対象とした東京商工リサーチの調査ではまず、政府が努力義務の検討を進める「3歳までの在宅勤務」「3歳までのフレックスタイム制の適用」「就学前までの残業免除権の拡大」が導入された場合、業務に支障が出るかどうかを聞いた。

   すると、3つのうち1つ以上の導入で「業務に支障が出る」と回答した企業が半数(49.9%)を占めた。

   「支障あり」と回答した企業の規模別では、大企業(資本金1億円以上)が51.9%、中小企業(1億円未満)が49.6%で、大企業が2.3ポイント上回った。

   大企業では女性の登用を積極的に行い、責任ある職務に就く女性が多い分、カバーが難しいことが背景にある。ただ、規模を問わず、仕事と育児の両立支援策が業務に支障が出る企業は約半数となった【図表1】。

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(図表1)企業の規模別「支障あり」回答比率(東京商工リサーチの作成)

   「支障あり」の支援策別では、「3歳までの在宅勤務」(38.1%)が最も高く、次いで「3歳までのフレックスタイム制の適用」(26.1%)、「就学前までの残業免除権の拡大」(23.7%)と続いた【再び図表1】。

   コロナ禍で経験した「在宅勤務」については、社内コミュニケーションや効率化の問題点が指摘されている影響のあるようだ。

むしろ従業員数人の企業では、「少子化対策OK」の不思議

   一方、従業員数別にみると、意外な結果が出た。「支障あり」が最も高かったのは「300人以上」の59.7%だったが、「5人未満」は25.7%で、「300人以上」とは34.0ポイントもの開きがあった【図表2】。

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(図表2)従業員の人数別「支障あり」回答比率(東京商工リサーチの作成)

   つまり、従業員数が少ないほど「支障あり」と回答した企業が低かったのだ。これは、中小・零細企業は、従業員の高齢化や採用難などで、少子化対策の両立支援策が必要な若い年代が少ないことが要因とみられる。

   仮に、支援策が広がると、従業員が育児に取り組みやすくなる一方、中小・零細企業では出産・育児を行う若い世代を採用しなくなることが危惧される。

   また、業界別では、「支障あり」が最も高かったのは「製造業」(55.3%)。次いで「建設業」(52.8%)、「小売業」(52.4%)の順で、上位3業界では半数を超えた。この3業界を支援策別でみると、「3歳までの在宅勤務」の回答比率が高く、「製造業」(42.6%)、「建設業」(38.7%)、「小売業」(39.3%)と4割前後で並んだ【図表3】。

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(図表3)業界別「支障あり」回答比率(東京商工リサーチの作成)

   いずれも、「現場」の作業や、顧客との「対面」が中心の業界だ。仕事と育児の両立支援策では細やかな職場の実情把握が必要だろう。

   業種別では、「支障あり」が最も高かったのは「学校教育」(81.8%)だった。コロナ禍でリモート授業も一部浸透したが、授業が再開した現在、対面での授業のありがたさが改めて実感されている。教育の世界では、在宅勤務やフレックスタイム制の導入が難しい現実を示している【図表4】。

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(図表4)業種別「支障あり」回答比率(東京商工リサーチの作成)

   2位以下では、現場作業が中心の製造業関連のほかに、5位「宿泊業」(65.0%)、9位「社会保険・社会福祉・介護事業」(63.1%)、「飲食店」(同61.2%)など、対面サービス業も高かった【再び図表4】。

   東京商工リサーチではこうコメントしている。

「政府の支援策の拡充で仕事と育児が両立しやすくなることが期待される。だが、資金的な制約で支援策の導入が難しい企業では、子育て世代の働き手の雇用を抑制することが懸念される。従業員の働き方に加え、子育て世代の従業員採用への支援を抱き合わせた制度の検討も必要だろう」

   調査は2023年6月1日~8日、全国の5283社にインターネットを通じてアンケートを行なった。うち大企業は655社、中小企業は4628社だった。

「企業は、子どもが自然発生して勝手に働き手になる、と思っているの?」

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業務に「支障」が、と悩む経営者(写真はイメージ)

   今回の調査結果について、ヤフーニュースコメント欄では、さまざまな意見が寄せられている。

   まず、企業が「子育て支援」をすることを「支障がある」とみる姿勢そのものに対して違和感を訴える意見が目立った。

「今の従業員と業務を見比べていたら、『業務に支障がでる』となるだろが、企業は、子どもが自然発生して勝手に育って大人になって働き手になる、とでも思っているのだろうか。産む人がいて育てる人がいなければ、子どもは生まれないし育たない。それはつまり、次の現役世代=働き手がいなくなる、ということ。
従業員に新入社員のうちから1馬力で十分家族を養えるだけの給与を支払うか、そうでないなら2馬力の共働きで子どもを育てていける給与や制度、環境を整えるか。それが企業の義務じゃないかな。現在の業績だけを追いかけて、子どもを育てられないようにするなんて、国をつぶす行為だと思う」
「『支障がある』前提で(仕事の)プランを立てたら、『支障なし』になるのだ。働かせすぎなのでは。6~7割の力で業務が回るように設計しておいて、トラブル時に8割以上の力を注いで動けるように備えるべきでは。熱が出ても出社しろ、台風でも絶対来い、こんな企業文化は見直したほうがいい」
「なぜ、フランスやスウェーデンではガッツリ育児をして、ファミリータイムや時に1か月単位のバケーションをエンジョイしながら、『支障』がないようにできるのでしょうか? 答えは、企業担当者の職務遂行のチェーンが究極的につながる我々ひとり一人の最終消費者のマインドにあります。
『すみません、お願いした書類が届かないのですけど』『担当がいま育休で1か月いないのですよ』『あら、じゃあしょうがないわね。子育て頑張って!と伝えておいて。来月でいいわ』という、諸外国では当たり前の会話が共通了解として、この真面目な日本国民に受け入れられるかどうかだ」

   もっとも、こうした意見には、こんな反論がよせられた。

「中小企業を家族経営しています。必死で小さい子ども3人育てているから、お気持ちもわかります。しかし、そんな絵空事は、できるならとっくにやっています。あなたが思っているより、会社がお金を稼ぐことは、すごーーーーく大変です。社会福祉団体ではないのです」
「業務に支障がでたとしても、その制度を使う本人がその後もずっと辞めずに働いてくれるならいいが、数年で辞められるとキツイ。支障なく上手くできる家庭と、それができない家庭があることを調べたほうがいいかも。うまくできる家庭のスタイルを知ることで、仕事と育児の両立に必要なのは、企業の努力以上に配偶者や周りの家族の協力だということに気付くから」

「就学前の子どもより、小学生のいる社員のほうが大変」

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楽しく在宅ワークができる制度に(写真はイメージ)

   また、政府の対策が「3歳までの子どもがいる社員」や「就学前の子どもがいる社員」が中心になっているが、実は「小学生のいる社員のほうが大変だ」という意見が多かった。

「小学生も大変です。むしろ、私は小学校のほうが本当に在宅中心を許可していただきたいと強く感じます。保育園よりも早い帰宅。1人でのお留守番も治安や事故を考えると難しい。習い事も、小学校から本格的にやるから、後にも繋がりが強くなる。3歳とかわけわからない年齢で区切るのではなく、小学校卒業までは家庭と育児が両立できるように、動いて欲しいです」
「保育園中は、在宅でも出勤でも特に問題ないと思います。それよりも、小学生になって在宅できるメリットを実感しています。休憩時間をずらして学校行事に参加したり、習い事の見送りをしたり、支度や宿題の声かけなど。保育園時代に比べ、お迎え要請の電話も増えます。特に低学年のうちはフォローが必要なことが多いです」

   さらに、同じ会社で働くことを前提にしているから難しくなる。スパッとやめて別の会社で働くシステムを社会全体で再構築しては、という提案もいくつか目に付いた。

「労働者からすると、3歳まで在宅勤務が可能で、夫婦共に育休を取得出来て給与を満額もらえる仕事。というのはありがたいです。しかし、雇用者側からすると、時間的、環境的制限がある労働者よりも、ない労働者のほうがありがたい。終身雇用をなくす流れであるならば、スパッと辞めてガッツリ育児に専念し、再びサクッと入れるシステム構築をしたほうがよいのではないかと思います」
「私の弟の会社は、子育てがそこそこ終わりつつあるアラフォーの女性(子どもが中高生とか)をバンバン採用している。一生懸命子育てをして色々な経験を積んでいるから、男性社員も気楽に話せて、たいそう和やかなのだとか。そして、女性たちはとても元気で働き者だし、長く働いてくれるそうです。このように、出産などで一度会社を辞めても、また働ける会社があるというのが分かれば、みんな安心して子育てできるのにと思います」

   また、現在は「子育て」に目がいっているが、今後は「介護」だという指摘も多かった。

「育児と仕事の両立についてのアンケートですが、今後加速的に生じるのは、介護と仕事の両立や、介護&育児と仕事との両立ですよ。育児と仕事の両立が職場で回せられるようにしないと、介護と仕事の両立といった次のフェーズになったら、本格的な介護離職が頻発するのです。あと数年後に。介護の場合、育児と違い、(終わりの)めどが立たないのが特徴。喫緊の課題として構築させてほしいです」

「子育ては自然の営み、その支援は人類存続のための義務」

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介護と仕事の両立という場合もある(写真はイメージ)

   最後に、「動物の営み」「人類の歴史」という人間の原点から考えるべきだという提案を紹介したい。

「『支障』というが、そもそも子育て支援は人類の存続のためにしなければならないもの。むしろ、仕事が子育ての支障なのだが。つまり、これからは夫婦が子育てに全力投球することを大前提に、余った時間とリソースで仕事をして生産していく。そういう社会に変えていかないといけない」
「昔に比べて(AIなどの)テクノロジーが発達した今、機械が行う分の労働は、時間も手間も、必要な子育てに充てる仕組みにできないのでしょうか。本来仕事は、子育てを安心安全に行うためにあるもので、仕事のために子育てをしにくいなど、本末転倒もよいところです」
「その通り。育休や時短よりも、各企業の従業員家族の出生率の算出を義務化してみては?と思う」
「動物としての当然の営みを、『支障』という違和感」

(福田和郎)

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