むしろ従業員数人の企業では、「少子化対策OK」の不思議
一方、従業員数別にみると、意外な結果が出た。「支障あり」が最も高かったのは「300人以上」の59.7%だったが、「5人未満」は25.7%で、「300人以上」とは34.0ポイントもの開きがあった【図表2】。
つまり、従業員数が少ないほど「支障あり」と回答した企業が低かったのだ。これは、中小・零細企業は、従業員の高齢化や採用難などで、少子化対策の両立支援策が必要な若い年代が少ないことが要因とみられる。
仮に、支援策が広がると、従業員が育児に取り組みやすくなる一方、中小・零細企業では出産・育児を行う若い世代を採用しなくなることが危惧される。
また、業界別では、「支障あり」が最も高かったのは「製造業」(55.3%)。次いで「建設業」(52.8%)、「小売業」(52.4%)の順で、上位3業界では半数を超えた。この3業界を支援策別でみると、「3歳までの在宅勤務」の回答比率が高く、「製造業」(42.6%)、「建設業」(38.7%)、「小売業」(39.3%)と4割前後で並んだ【図表3】。
いずれも、「現場」の作業や、顧客との「対面」が中心の業界だ。仕事と育児の両立支援策では細やかな職場の実情把握が必要だろう。
業種別では、「支障あり」が最も高かったのは「学校教育」(81.8%)だった。コロナ禍でリモート授業も一部浸透したが、授業が再開した現在、対面での授業のありがたさが改めて実感されている。教育の世界では、在宅勤務やフレックスタイム制の導入が難しい現実を示している【図表4】。
2位以下では、現場作業が中心の製造業関連のほかに、5位「宿泊業」(65.0%)、9位「社会保険・社会福祉・介護事業」(63.1%)、「飲食店」(同61.2%)など、対面サービス業も高かった【再び図表4】。
東京商工リサーチではこうコメントしている。
「政府の支援策の拡充で仕事と育児が両立しやすくなることが期待される。だが、資金的な制約で支援策の導入が難しい企業では、子育て世代の働き手の雇用を抑制することが懸念される。従業員の働き方に加え、子育て世代の従業員採用への支援を抱き合わせた制度の検討も必要だろう」
調査は2023年6月1日~8日、全国の5283社にインターネットを通じてアンケートを行なった。うち大企業は655社、中小企業は4628社だった。