「丸亀製麺」トリドールHD、「IT Japan Award 2023」準グランプリに 業務システムのSaaS化進め、優れたIT活用が評価

建築予定地やご希望の地域の工務店へ一括無料資料請求

   日経コンピュータ(日経BP)が主催する、優れたIT事例を表彰する「IT Japan Award」。

   17回目となった「IT Japan Award 2023」の受賞企業が2023年6月19日に発表され、グランプリにパナソニックホールディングス(HD)が、準グランプリに讃岐うどん専門店「丸亀製麺」などの外食事業を展開するトリドールホールディングス(HD)が輝いた。

   このうちトリドールHDは、外食産業の受賞としては、宅配ピザチェーン店などを手掛けるストロベリーコーンズ(第11回・2017年)や、回転寿司チェーンのあきんどスシロー(第9回・2015年)などに続くかたちとなった。

   DX先進企業として、たしかな存在感を発揮してきたのが、トリドールHDだった。今回の評価は「業務システムを全てSaaSへ、『持たない』を徹底し海外展開加速」というテーマに対してのものだったが、ではどのような取り組みを行ってきたのだろうか。同社に話を聞いた。

  • 日経コンピュータ主催「IT Japan Award 2023」のロゴ(日経BPのリリースより)
    日経コンピュータ主催「IT Japan Award 2023」のロゴ(日経BPのリリースより)
  • 日経コンピュータ主催「IT Japan Award 2023」のロゴ(日経BPのリリースより)

「食の感動体験」を世界へ広めるために 業務改革ありきのDXに取り組む

   「食の感動体験」を世界へ広めるグローバルフードカンパニーに成長する――。かねてから、このビジョンを掲げてきたトリドールHD。その実現を目指して取り組んできたことが、DX推進だったという。

   具体的には2020年1月、DX戦略「DXビジョン2022」を掲げ、

(1)(IT環境の調達・運用を自社で行う)オンプレミスを廃止して、業務システムを全てSaaSへ移行する
(2)バックオフィスの定型業務をBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)へ移管する
(3)VPNを廃止して、(ネットワークの境界に依存しないセキュリティの)ゼロトラストを導入する

   という方針を打ち立て、DXを加速させてきた。これらの根幹にあるのは「業務改革ありきのDX」だということだ。

「内製化の逆張りともいえる手法でDXを進めていますが、自社でサーバやソフトウェア資産を持たないことで、迅速に変化へ対応できる業務プロセスやシステムを構築しています。まさに業務改革ありきのDXといえます」
kaisha_20230630092009.png
トリドールHDのウェブサイト。同グループでは「食の感動で、この星を満たせ。」をコーポレート・スローガンに掲げる

   今回の準グランプリの受賞について、トリドールHD執行役員/CIO/CTOの磯村康典さんは、J-CAST 会社ウォッチに、「当社が取り組んできたDXを高く評価していただいたことを非常に嬉しく思います」と話した。

   つづけて、トリドールHDがDXで目指したことは、

「DX推進には内製化が常識とされてきましたが、変化に強いビジネスプラットフォームを構築しようと考えた場合、果たして自社でしか使えないIT資産を抱え続けていくことは本当に正しいのだろうかと考えました。
むしろ、いつでも変化するためには、いつでも新しいシステムに乗り換えられるよう、自社IT資産を極力持つべきではないと考えるようになりました。その結果、サブスクリプションの組合せで業務システムを作れないだろうかというアイデアに至りました。一見相反することでも妥協せずに両立を目指す、まさに二律両立のDXです」

   と説明する。

   ちなみに、DXの取り組みは「はじめは数人で始めた」とも言う。それが、取り組みの加速とともに関係するプレーヤーも増え、同時に、そうした協働なしには同社のDXは実現できなかった。それだけに、最後は、こんな感謝の言葉も。

「今では社内やパートナー企業の多くのみなさんに協力していただけるようになり、DXを大きく推進することができ、本当に感謝しています。今回の受賞は、協力してくれたみなさんのおかげです。誠にありがとうございました」

   なお、IT Japan Awardは、「情報システムを構築・活用し、顕著な成果を上げている企業・団体を発掘し、成功のノウハウを広く共有する」という目的のもと、日経コンピュータが2007年から毎年、企業・団体を表彰するものだ。

   同賞では、過去1年間に『日経コンピュータ』と『日経クロステック』に掲載されたIT活用記事を対象とし、社外審査員も加わって審査する。審査基準として、3つの視点――「経営革新・業務改革への貢献度」、「システム構築・活用における独創性」、「採用技術・手法の先進性」をもととしている。

◆IT Japan Award 2023【受賞企業】

●グランプリ
パナソニックホールディングス株式会社
パナソニック、100年企業のデジタル変革

●準グランプリ
株式会社トリドールホールディングス
業務システムを全てSaaSへ、「持たない」を徹底し海外展開加速

●特別賞
カゴメ株式会社
トマトの収量をAIが5週先まで予測 安定供給でぶれない商談実現へ

株式会社かまくらや
かまくらやのIT活用「サラリーマン農業」、自動車販売社長が長野県最大級のそば農家に

東武鉄道株式会社
東武鉄道の車上IoTが生む電力削減効果、野田線「1両減車」決断にも

株式会社バニッシュ・スタンダード
販売員の「ネット接客」を見える化、アパレル業界の悪しき慣習に風穴

姉妹サイト