世界的にSDGs(持続可能な開発計画)への取り組みが普及、促進されるなか、企業のBtoB(企業間)取引で製品やサービスを調達する際に「環境的」、「社会的」、「経済的」な持続可能性の観点から考慮し、選択する「サステナブル購買」(Sustainable Procurement)への取り組みの重要性が高まっている。
ブランド総合研究所(東京都港区)が2023年6月27日に発表した「BtoB企業のSDGs調査 2023」によると、サステナブル購買が「購買や調達する際の選定条件となっている」と答えた人は8.8%、「一部の購買や調達で選定条件としていることがある」は9.7%で、合わせて18.5%が「選定の条件になっている」と答えた。
また、「選定条件とはしていないが、購買や調達の際の参考にしている」とした人は16.4%で、「選定の条件になっている」人との合計で、約35%が「サステナブル購買を行っている」ことがわかった。
サステナブル購買「特に条件や参考にはしていない」が最多
調査は、国内の有力なBtoB企業256社がSDGsでどのように評価されているかを、会社員と経営者に聞いた。有効回答数は、2万3228人。
サステナブル購買が「購買や調達する際の選定条件となっているか」と聞くと、「特に条件や参考にはしていない」と答えた人が35.4%で最多だった。次いで、「条件や参考にしているかを知らない、わからない」が18.9%、「選定条件とはしていないが、購買や調達の際の参考にしている」が16.4%で続いた。
「選定条件となっている」と答えた人は8.8%、「一部の購買や調達で選定条件としていることがある」が9.7%だった。「SDGsのことを知らない」という人も10.9%いた。「その他」は0.1%。【図1参照】
調査では、BtoB取引(購買・利用)に関与していると答えた1万3078人に、「あなたは各社がSDGs(持続的な開発目標)への取り組みをしていると思いますか」と聞いた。
聞き方としては、1人の回答者あたり10社を示し、それぞれ「本格的に取り組んでいる」、「少し取り組んでいる」、「どちらともいえない」、「あまり取り組んでいない」、「まったく取り組んでいない」の5段階から選んでもらった。
そして、その回答をそれぞれ100点、50点、0点、マイナス50点、マイナス100点で加重平均した点数で比べた。ただし、集計の対象は業務上で商品やサービスの購入や利用に関与している人で、各社について認知している人のみを対象とした。
SDGsの取り組みに対する評価では、最も評価が高い企業は、トヨタ自動車で、37.3点だった。【表1参照】
トヨタは、SDGsに「本格的に取り組んでいる」との回答が30.6%と、256社の中で最も高く、「少し取り組んでいる」(21.5%)との合計では、半数を超える52.1%が評価していた。
SDGsの「17のゴール」やESG(環境、社会、コーポレート・ガバナンス)の取り組みも含めた、主要な3つの評価で1位となった。
2位は、パナソニックで28.9点。3位と4位には日産自動車(28.5点)、本田技研工業(28.2点)の自動車大手が並んだ。5位には「サス鉄ナブル」とウイットのきいたキャッチのJFEスチールが入った。
11位はクボタ、15位メディセオ、18位に東京エレクトロン...
惜しくもトップ10には届かなかったが、11位には「食料・水・環境」をテーマに取り組むクボタ(25.6点)が入った。12位には日立製作所と無印良品が25.2点で並んだ。14位はサントリー(25.1点)、15位は医療用医薬品や医療機器のメディセオが続いた。
18位に半導体製造の東京エレクロトロン(24.5点)、19位のDIC(旧大日本インキ化学工業、24.4点)などのBtoB企業が上位にランクインした。
また、順位が上位の企業の中には、一般的な認知度があまり高くないBtoB企業が多く含まれている。【表2参照】
なお、調査対象の256社の平均は19.2点で、その内訳をみると「本格的に取り組んでいる」が13.9%、「少し取り組んでいる」が19.2%で、「取り組んでいる」と答えた人は合わせて33.1%となった。「どちらともいえない」は59.3%だった。【図2参照】
SDGsの情報は「テレビ」を通じて入手している
では、各社のSDGsの情報はどこから入手したのか――。
BtoB取引の購買に関与する人が、各社のSDGs情報を入手した経路について、256社の平均をまとめた(各社を「名前も知らない」と答えた人は集計の対象外)ところ、最も高かったのは「テレビCM」で11.4%だった。
次いで、「テレビ番組やニュース」で9.9%、「企業のホームページ」が8.6%で続いた。「ネットニュースや情報サイト」は7.7%で、ネット媒体の高さが目立った。「新聞や雑誌の記事」と答えた人は6.9%だった。
ちなみに、情報リーチ率(いずれか一つ以上から情報を得ている人の割合)は47.8%で、ほぼ半数ぐらいに各社のSDGs情報が伝わっていることになる。
USJ、「ジェンダー平等」など3つの目標でトップ
各社のSDGsの取り組みについて、購買に関与した人がSDGsの「17のゴール」のそれぞれ「取り組んでいる」と評価した企業名とその回答率、および256社平均を、図4にまとめたところ、「1.貧困をなくす」ではイオンが最も高く11.8%、「2.飢餓をゼロに」では日清食品の18.9%だった。
「8.働きがいも、経済成長も」と「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」はいずれも村田製作所が最も高かった。商船三井も「13.気候変動に具体的な対策を」と「14.海の豊かさを守ろう」の2つの目標でトップだった。
ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)は「5.ジェンダー平等を実現しよう」「10.人や国の不平等をなくそう」「16.平和と公正をすべての人に」の3つの目標で最も高くなった。
同様に、各社のESG活動(SDGsの「17のゴール」と類似している項目は省く)の評価については、「環境に配慮している」や「社会貢献活動をしている」、「国際化が進んでいる」「スポーツや文化活動に熱心」「コンプライアンスを遵守している」の5項目で、トヨタ自動車が最も高かった。
「高齢者や障がい者にやさしい」ではメディセオが、「働き方改革に取り組んでいる」では日鉄物産、「科学技術の発展に貢献している」ではNECなど、BtoB取引の割合が大きい各社が上位となっていた。【図5参照】
なお、「BtoB企業のSDGs調査 2023」は20歳~69歳の会社員と経営者、役員を対象に、2023年5月1日~3日にインターネットで実施した。
対象の企業は国内でBtoB取引の多い256社(業種別に売上高が大きい企業を中心)を抽出。調査項目は「SDGs評価指数」「ESG活動評価」「企業評価指標」「購入や利用経験」「購買・調達の関与」の5つのテーマおよび、回答者の属性で構成した。各社1000人(1人の回答者には10社について評価)となるように、2万6000人の回答を集めた。このうち、有効回答者数は2万3228人。