「労働者の権利を蔑ろにする」
「長時間労働や過重労働、残業代の不払い、低賃金など労働環境が過酷」
「休日や有給休暇の取得が困難」
「パワハラ・セクハラが横行する」
「コンプライアンス意識が欠如している」
......。ブラック企業にはブラック企業たる所以があるようだが、勤務している会社がブラック企業だと感じたとき、「どのように対処したか」聞いたところ、約4割の人が「すぐに退職する」と答えた。
Webメディア・マーケティング事業を展開するシフィット(東京都渋谷区)が637人の男女に聞いた。2023年6月15日に発表した。
ブラック企業で働いていたときの平均残業時間は、月56時間
調査によると、「これまで勤務したことのある会社がブラック企業だと感じたことがあるか」と聞いたところ、じつに61%もの人が、勤めていた会社を「ブラック企業だと感じたことがある」ということがわかった。「ない」と答えた人は22%、「わからない」は17%だった。
この結果、多くの人が「ブラック企業に勤務した経験がある」という現実が浮き彫りになった。同じ会社でも一部の部署やプロジェクト単位、あるいは特定の上司や時期において「ブラックな環境」に陥っているケースもありそうだ。
また、ブラック企業で働いたことのある人に、その時の平均残業時間を聞いたところ、なんと56時間という結果だった。【図1参照】
残業時間が「~40時間」と答えている人が16%と一番多く、さらに驚くべきことに残業時間が「40時間以上」と答えた人が過半数を超えている。
ブラック企業だと感じたときの対処法は「すぐに退職する」が約4割
次に、ブラック企業の勤務経験がある人に「働いている会社がブラック企業だと感じたときの対処法は?」と聞いたところ、「すぐに退職する(した)」と答えた人は39%で最も多かった。次いで、「退職に向けて準備をする」が27%、「家族や知人・友人に相談する」が14%と続いた。【下の円グラフ1参照】
「すぐに退職する(した)」人に、「どうしてそのような判断をしたのか」聞くと――。
「極度の残業や休日出勤が常態化していて、働き方が常軌を逸していると感じていた。このまま続けても身体を壊すと思ったから退職した」(30才~34才男性、情報通信業 クリエイティブ)
「休日出勤は当たり前。プライベートな時間は削られ有給の取得も制約される。他の人と同様にふつうの生活をしたいと思い退職しました」(25才~29才女性、小売業・接客業)
「上司のパワハラが凄まじく精神的に無理でした。(35才~39才男性、金融業・保険業 営業)
「低賃金なのに残業代の未払いは発生するわで、会社への不信に加えて経済的にしんどかったため」(25才~29才男性、生活関連サービス業 オペレーター)
こういった理由があがった。
「退職に向けて準備をする」と答えた人には、その判断の理由を聞いた。すると、こんな声が――。
「新たな職場を見つけるまで現職にとどまる」(25才~29才男性、医療・福祉 介護職) 「退職後の生活費の不安があったので、まずは準備をしっかりしようと思いました」(25才~29才女性、宿泊業・サービス業)
「次の会社もまたブラック企業だったら...と考えるとなかなかすぐに退職できない」(20才~24才男性、飲食サービス業 販売)
また、「家族や知人・友人に相談する」と答えた人からは、
「退職後のキャリアプランや進路について具体的に検討するために、ひとまず友人に相談して助言をもらおうと思いました」(30才~34才男性、保険業 営業)
「自分と異なる視点や情報を持っているかもしれないので」(25才~29才男性、不動産業 営業)
といった声があった。
一方で、「退職しない・様子を見る」と答えた人は、
「責任あるポジションのため将来的なキャリアや経歴を考えると辞められない」(45才~49才男性、小売業 人員管理)
「上司との関係を改善すれば、少しは働きやすくなる可能性もあるため」(25才~29才男性、保険業 経営企画)
「仮に退職しても転職先の選択肢や条件が限られていると思い、退職を踏みとどまっています」(35才~39才女性、福祉 総務・広報)
などの意見があった。「退職をしない」という人の中には、「状況を確認したい」「改善する可能性が残されている」という理由で、今の職場に踏みとどまるという声がみられた。
調査によると、「労働基準監督署に通報する」と答えた人もいた。
「長時間労働と残業代未払いが続き、心身ともに疲弊していました。労働基準に違反している企業のあり方を是正したくて相談しました」(30才~34才男性、製造業 生産管理)
「休日出勤が常態化していて有給休暇もまったく取れず、労働者の権利を阻害されていると思ったので」(25才~29才男性、小売業 販売)
「雇用契約の不正を報告するため」(30才~34才女性、建設業 経理)
こんな声が寄せられた。
ちなみに、通報は匿名でも可能なため、自身の身を守りながら問題解決に向けて動くことができる。
あなたが思うブラック企業の見分け方、第1位は「求人頻度が高い」
さらに、調査対象者全員に「あなたが考えるブラック企業の見分け方は?」と聞いたところ、「求人頻度が高い」と答えた人が37%と、3分の1以上を占めて最も多かった。【円グラフ2参照】
「離職者が続出していたので、頻繁に求人募集を行っていた」(24才~29才男性、物品賃貸業 営業)
「人手不足で一人ひとりの業務負荷が増加。従業員の定着率も低く、定期的な人員補充が必要な職場でした」(35才~38才男性、運輸業 業務係長)
「良い人材を募集しようとしているが、うちのような地味な会社に応募する人がいない」(40才~44才男性、卸売業 人事・総務)
第2位の、「募集要項の給料が高すぎる、あるいは低すぎる」(25%)というのもブラック企業の特徴といえそうだ。
「高水準な給料体系に魅力を感じて入社しましたが、実際は過度な長時間労働や想定外の業務を要求されるという事態に...」(25才~29才男性、情報通信業 エンジニア)
「長時間の残業が当たり前となって、しかも給料に反映されない」(30才~34才男性、保険業 内勤営業など)
「給与の大部分をノルマ達成による歩合制だったため、ベース給与がとても低かったです。しかも入社前に歩合について詳細を教えてくれず、入社後に知るという有様でした」(20才~24才男性、不動産業 営業)
こういった具合だ。
入社前には給与体系の詳細を教えてくれなかったのに、じつは「残業時間込みの基本給だった」「基本給よりも歩合で稼げという会社だった」といった回答が25%の人から寄せられていた。
給料が高すぎる場合は、高額な給与を提示することで、不当な長時間労働や労働条件の不合理さをカモフラージュしようとするケースがあること。また、給料が低すぎる場合は、ブラック企業が従業員に対して適正な報酬を支払うことを怠っていることが考えられる。
会社の数字を把握している「経理」の人が辞めていくとヤバいかも...
第3位は、「会社内の雰囲気が異様」。12%の人が、そう答えた。
「突然上司が激怒し、部下に対して怒鳴りつけている光景が目に焼き付いています。みんな萎縮して怖気づいていました」(30才~34才男性、金融業 営業)
「面接でうかがったとき、社員さんとすれ違った際に挨拶をしても返ってこなかった。会社全体にどこか薄暗い雰囲気があったのを覚えています」(25才~29才女性、情報通信業 営業事務)
「朝から憂鬱そうな表情で出勤し、一日中気持ちが重かったです。同僚も無表情で、笑顔が見られない職場でした」(40才~44才男性、小売業 総務)
などの声があった。
第4位は、たとえば無礼な態度や侮辱的な発言、不適切な行動や態度など、「面接時の担当者の態度がおかしい」(8%)ことがあがった。第5位は「古株社員の給料が低すぎる」(5%)、第6位に「内定が出るのが早すぎ」(4%)、第7位には「経理の人から辞めていく」(3%)といった「見分け方」が続いた。
上司や先輩社員が低賃金で働いているのがわかると新入社員や若手社員は「頑張っても報われない」「昇給の機会がほとんどない」と不安になるし、面接が終わった直後に驚くほど早く内定をもらっても不安になる。
ブラック企業では、会社の数字を一番把握している経理スタッフが辞めていく現象が起こることがあるという。「その理由はさまざまですが、社員の給与や労働条件の不満、過剰な採用コストや強引な取引など、数字を見ているうちに会社の問題点がわかってくるからでしょう」と、シフィットはみている。
なお、調査は社会人経験のある18歳以上の人を対象に、2023年4月24日~5月19日にインターネットで実施した。有効回答者数は、637人。