「ウェルビーイングな働き方」調査...バリバリ働く「ワーク重視派」は減り、私生活楽しみたい「エンジョイ派」が増える 誰もが働きやすい職場環境には、きめ細かな制度も大事

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   「ウェルビーイング」という言葉はご存じですか? 「(Well-being)」とは、「Well(よい)」と「Being(状態)」が組み合わさった言葉で、直訳すると、「健康」、「幸福」、「福祉」などとなる。

   一般的に「ウェルビーイング」といえば、心身の健康だけではなく、精神的な健康、社会的な健康を意味する。近年、企業や個人のワークライフバランスを意識した「働き方」が見直される中で、注目され始めた概念だ。「ウェルビーイング」を重視した経営を目指す会社も少なくない。

   こうしたなか、NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション(東京都品川区)は2023年6月27日、NTTデータ経営研究所と共同でおこなった「男女のウェルビーイングな働き方に関する調査」の結果を発表した。

   調査によると、コロナ前には割合の高かった収入やキャリアを大切にする「ワーク派」が減少傾向(約48%→約41%)だったのに対して、家族や友達、趣味を重要視する「エンジョイ派」が約44%で最多を占めているという。

   また、「ウェルビーイング」な働き方の実現に必要となってくる、「介護休暇」や「時短勤務」、「ステップアップにつながる研修」を3割以上の回答者が利用したい意向を示しているが、希望と実態のギャップも大きいようだ。

  • ウェルビーイングな働き方の実態とは(写真はイメージです)
    ウェルビーイングな働き方の実態とは(写真はイメージです)
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コロナを経て、バリバリ働く「ワーク派」が減少傾向

   今回の調査では、女性の社会進出と価値観の多様化を背景に、働く男女の「ウェルビーイング」な働き方に関する意識を聞いた。

   同社によると、「共働きの男女世帯における『夫が費やす家事・育児・介護の時間』は妻の2割程度にとどまっていること」(内閣府の調査より)。また、「日本の女性は世界で最も睡眠時間が少ないこと」(OECDより)や、「日本の管理職に占める女性の割合が約13%にとどまっていること」(内閣府の調査より)などの課題意識から出発して、とくに働く女性のウェルビーイングな働き方に注目した調査となっているようだ。

「本調査では、役員を含む正社員の男女を対象として、仕事に限らず家事・育児や趣味、ボランティアなど様々な活動について重要度を問うことで、ウェルビーイングな働き方の価値観を探ることを目的とした。あわせて、望む働き方の実現度合いや十分に実現できていない理由、職場における活躍の充実度合なども調査し、働く女性にとって望ましい活躍支援策を検討した」(NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション)

   なお、調査にあたっては、人々の志向を以下の5つのタイプに分類した。

・ワーク派:仕事での収入や社会的ステータス、仕事でのキャリアアップ・スキルアップ、副業を重視
・ライフ派:家事・育児、介護、見守り、治療、療養、リハビリを重視
・エンジョイ派:家族・友人、趣味、自己研鑽、自己成長を重視
・ソーシャル派:仕事を通じた社会課題解決や社会貢献、ボランティアを重視
・その他
図1(NTTデータ経営研究所 NTTコム リサーチの作成)
図1(NTTデータ経営研究所 NTTコム リサーチの作成)

   働く男女のウェルビーイングな働き方に関する価値観とは――。

   調査ではまず、仕事や家族・友人、ボランティアなどの各項目について最も重視する活動を調査した。その結果、特長的だったのは、コロナ以前は仕事に関する項目を重視する「ワーク派」が男女平均で「約48%」(女性:42.3%、男性:54.1%)と最多だったのに対し、コロナ以後では「ワーク派」は「約41%」(女性:34.4%、男性:47.5%)と減少していることだ。

   ところが一方で、家族・友人との時間などを重視する「エンジョイ派」が「約44%」(女性:46.7%、男性:41.5%)と最多になっている。この結果に、同社は「コロナ禍を経て、働く男女がプライベートを重視した価値観へと移行している」と指摘する。

   男女の価値観の差が見られたのは、家事・育児を重視する「ライフ派」。「ライフ派」は、コロナ前・現在・今後の希望のすべての段階を通じて、女性が多い傾向にあった。しかし、この男女差は縮小傾向にあるという。同社は「コロナ以前は女性のライフ派は男性の3倍程度だったが、現状では2.3倍、今後の希望では2倍となった」としている。

育休・産休制度、女性取得は50%以上 男性は15%と低く、まだまだ課題に

図2(NTTデータ経営研究所 NTTコム リサーチの作成)
図2(NTTデータ経営研究所 NTTコム リサーチの作成)

   続いて、ウェルビーイングな働き方の実現に役立つと考えられる各種制度の利用状況はどうか。

   調査によると、「介護休暇の取得」の項目は、女性で「利用したことはないが、利用したい」が「9.6%」、「利用したいが制度がない」が「21.5%」。男性で「利用したことはないが、利用したい」が「13.9%」、「利用したいが制度がない」が「38.9%」となり、男女ともに関心が高いことがわかった。

   こうした結果について同社は、「介護休暇では『周囲で利用している人がいない』ことが利用に踏み出せない背景となっていることが多い。男女ともに利用実績が少ないことから、会社全体で利用のイメージを持ちやすくなるよう他社事例を学ぶといった機会を持つことが有効と考えられる」と分析している。

   また、「時短勤務」の項目については、女性で「利用したことはないが、利用したい」が「6.7%」、「利用したいが制度がない」が「31.1%」。男性で「利用したことはないが、利用したい」が「16.3%」、「利用したいが制度がない」が「34.7%」となった。

   さらに、「ステップアップにつながる研修」の項目では、女性の「利用したことはないが、利用したい」が「5.8%」、「利用したいが制度がない」が「28.8%」。男性で「利用したことはないが、利用したい」が「14.1%」、「利用したいが制度がない」が「40.6%」となった。

   この結果について同社は、

「スキルアップにつながる研修については、男性は『周囲で利用している人がいない』ことが利用していない最大の理由であるのに対し、女性は『利用する時間がない』ことが最大の理由となっている。
家庭や趣味などと両立させながら仕事に取り組むタイプが多い女性が、研修を利用しやすくするために、研修の時間を就業時間内に組み込むといった工夫が考えられる」

   としている。

   一方で、制度の利用意向がある回答者のうち、実際に活用したことがある回答者の割合を示した(実践指数:「利用したことがある」÷(「利用したことがある」+「利用したことがないが、利用したい」)では、育休・産休制度について男女差が大きく、女性の実践指数が50%であるのに対して、男性は15%に留まった。

図3(NTTデータ経営研究所 NTTコム リサーチの作成)
図3(NTTデータ経営研究所 NTTコム リサーチの作成)

   他方、各種制度については、制度と利用意向があるが、利用したことがない理由として、男性はすべての項目で「周囲で利用している人がいない」が最多となった。同社は「女性はハラスメント対策制度、生理休暇について『利用していることを知られたくない』と考える人が多くいることがわかった」としている。それだけに、

「男女ともに制度の導入だけでは利用の拡大には障壁が残るため、利用しやすくするための運用上の配慮が重要と考えられる」

   と、同社はコメントしている。

   最後に、同社では、誰もが働きやすい職場環境の実現に向けて、重視するものの違う女性に対して支援策の導入度、実際に各支援策の利用が広がるような工夫が重要だ、と指摘している。

   支援策の例としては、

・昇進に意欲的なワーク派には、スキルアップにつながる研修などの提供充実
・各種制度を利用しながら仕事と家庭の両立を図るライフ派には、使いやすい環境整備
・テレワークを重視するエンジョイ派には、利用制度の見直しで利用できる対象者を拡大

   など、女性社員が目指すキャリアに合わせた支援策の充実をあげている。

   なお、この調査は2023年1月26日~28日、非公開型インターネットアンケートとして実施された。有効回答者数は1041人となっている。

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