【よくわかる新規上場株】Laboro.AI(ラボロエーアイ)社員の平均年収は980万円! 気になるサービス内容もチェック

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   就職先や転職先、投資先を選ぶとき、会社の業績だけでなく従業員数や給与の増減も気になりませんか?

   上場企業の財務諸表から社員の給与情報などをさぐる「のぞき見! となりの会社」。今回取り上げるのは、企業の成長戦略や事業課題に合わせた「オーダーメイドのAI開発」を行い、2023年7月31日に東証グロース市場に上場を予定しているLaboro.AI(ラボロエーアイ)です。

   2016年、人工知能技術を用いたソリューション開発や人工知能の活用に関するコンサルティングを目的として設立。同年に「カスタムAI」サービスおよび「ソリューションデザイン」の手法体系整備を開始しました。

   2017年以降「マッチングソリューション」「文書分類・タグ付けソリューション」「強化学習による振動制御ソリューション」「不良・異常検出ソリューション」などのサービスを相次いでリリースし、大手企業と取引しています。

幅広い業界で通算200超のプロジェクトを遂行

   それではまず、Laboro.AIの近年の業績の推移を見てみましょう。

   Laboro.AIの売上高はここ数期、順調に伸びています。利益も伸びていますが、2022年9月期に営業赤字および最終赤字に。これは、事業拡大に向けた採用・育成の加速や、人員増加に伴うオフィス拡張等により費用が増加したためです。

   今期(2023年9月期)は上期終了時点で、売上高が6.4億円、営業利益が1.0億円、当期純利益が6900万円。前期を上回り過去最高を更新することがほぼ確実です。

   Laboro.AIは「カスタムAIソリューション事業」の単一セグメント。顧客企業固有の成長戦略や事業課題に合わせた「オーダーメイドのAI開発」と、「AI導入・事業変革のコンサルティング」の2つのサービスを提供しています。

   画像、言語、音声、強化学習などあらゆる領域のAI開発を行いますが、顧客のビジネスの新しい施策展開に関連するAIテーマを主対象としており、Laboro.AIではこれを「バリューアップ型AIテーマ」と定義しています。

   すでに幅広い業界の代表的な企業と通算200を超えるプロジェクトを遂行しており、AIソリューションの開発だけでなく、導入を通した企業変革のデザインの事例を蓄積し、手法体系として整理・拡張しているとのことです。

   これまで取り組んできたプロジェクトの例は、BtoB業界では「工程スケジューリング」(精密機器メーカー)や「建設物の揺れ制御」(建設会社)、「匂いデータの分類」(自動車メーカー)など。

   BtoC業界では「未来予測レコメンド」(ECサイト)、「応募予測&検索最適化」「人と職のマッチング」(人材企業)、「困り感情の推定」(機械メーカー)などと多種多様です。

経営者は元ボスコン、平均年齢36.3歳の精鋭集団

   Laboro.AIの従業員数は、2018年3月期はわずか2人でしたが、2019年3月期は8人、2019年9月期以降は11人→18人→31人→40人と順調に増え、2023年5月末は51人となっています。

   従業員の平均年齢は36.3歳、平均勤続年数は1.6年。平均年間給与(単体)979.9万円は、かなり高い水準といえるでしょう。

   Laboro.AIの採用サイトを見ると、機械学習エンジニア(機械学習・AI開発 エンジニア職)とソリューションデザイナ(営業・コンサル・プロジェクトマネージャー職)があり、それぞれのシニアポジション(リード機械学習エンジニア、シニアソリューションデザイナ)での募集も行われていますが、想定年収は示されていません。

   代表取締役CEOの椎橋(しいはし)徹夫氏は1983年生まれ。米州立テキサス大学理学部物理学/数学二重専攻卒業後、ボストン・コンサルティング・グループ東京オフィスに参画し、31歳でプリンシパルに昇進(当時最年少)。2014年に東大工学研究科の松尾豊研究室でディレクターを兼任し、2016年にLaboro.AIを創業しました。

   代表取締役COO兼CTOの藤原弘将(ひろまさ)氏は1982年生まれ。独立行政法人に研究員として勤務しながら、京都大学大学院情報学研究科博士課程に社会人学生として入学し博士(情報学)を取得。2012年にボストン・コンサルティング・グループに入社。2016年に椎橋氏とともにLaboro.AIを創業し代表取締役CTOに就任。2022年からはCOOを兼任しています。

   有価証券報告書には、事業等のリスクとして「特定の人物への依存」があげられています。椎橋氏と藤原氏が重要な役割を果たしており、両名が退職する影響度は「高」とされているものの、発生可能性は「低」となっています。

「PoC死」で終わらせない プロジェクトの継続率7割超

   Laboro.AIは、2022年にカスタムAI搭載カメラソリューション「L-Vision」を、2023年に「ビジネス潜在ニーズ探索ソリューション」をリリースしています。

   近年、大手企業では「基幹システムの刷新」という第一段階のDXを終え、事業モデルや事業ポートフォリオの変革を伴うDXのあり方を模索している会社が増えています。そこで注目されているのがAI技術の活用です。高い技術力を持つAIベンチャーへの出資や資本業務提携、協業を行う事例が増えています。

   伝統的な大企業の場合、自社に高い専門性を有する人材を採用しようとしても、既存の給与テーブルとの整合性などから適切に処遇することは難しく、かといって従来のようにコンサルティング会社やSIerに丸投げしてしまうと、社内にノウハウが残らないまま高コストがかかってしまうという問題があります。

   そんな中、Laboro.AIは、SIerでもコンサルティングファームでもSaaS企業でもない「バリューアップ型AIテーマ」という差別化された領域へのポジショニングを取っています。AI系のプロジェクトは「PoC死(実証実験だけで頓挫してしまう)」が多い中、Laboro.AIでは7割超のプロジェクトが継続しているとのこと。

   クライアントからは「技術力以上に『一緒に考えること』」が評価されているそうですが、単なる「御用聞き」の人月仕事ではないパートナーとして頼られているのかもしれません。

   なお、近年の販売実績は、2021年9月期は味の素(2億8865万円)、ソニーセミコンダクタソリューション(9995万円)。2022年9月期はエン・ジャパン(9802万円)、SCREENアドバンストシステムソリューションズ(1億7875万円)、味の素(8806万円)。2023年9月期第2四半期はエン・ジャパン(1億3641万円)とSCREENアドバンストシステムソリューションズ(1億2764万円)が主な相手先となっています。

   2022年には博報堂と幅広いAI関連プロジェクトを共同実施する内容の資本業務提携を締結。三井化学やゼンリン、日本ガイシなどとも資本提携を行っています。(こたつ経営研究所)

こたつ経営研究会
こたつ経営研究会
有価証券報告書や決算説明書などの公開情報を分析し、会社の内情に思いをめぐらすニューノーマルな引きこもり。昼間は在宅勤務のサラリーマンをしながらデイトレード、夜はネットゲームをしたりこたつ記事を書いたりしている。好きなピアニストはグレン・グールド。嫌いな言葉は「スクープは足で稼げ」。
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