「銀行株」は買いなのか?...ダイヤモンド「激安株」、東洋経済「インボイス」を特集

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   「週刊東洋経済」「週刊ダイヤモンド」「週刊エコノミスト」、毎週月曜日発売のビジネス誌3誌の特集には、ビジネスパースンがフォローしたい記事が詰まっている。そのエッセンスをまとめた「ビジネス誌読み比べ」をお届けする(「週刊エコノミスト」は先週合併号だったため、お休み)。

PBR(株価純資産倍率)1倍割れの企業が狙い目?

   6月26日発売の「週刊ダイヤモンド」(2023年7月1日号)の特集は、「まだ間に合う激安株」。日本株が好調だ。だが、海外投資家から見たドル建て日経平均株価には依然割安感があり、時価総額が企業の実態価値を大幅に下回る「ディープバリュー(激安)株」が存在するというのだ。

   東京証券取引所がPBR(株価純資産倍率)1倍割れの企業に改善を促し、それに便乗するかたちでアクティビスト(物言う株主)が攻勢を強めるなど、「PBR1倍割れ企業」包囲網が狭まっている。

   そもそもPBRとは何か。分母に1株当たり純資産(BPS)、分子に株価を取ったものだ。企業の純資産に対する時価総額の割合を示す指標だ。

   PBR1倍割れ企業の株式時価総額ランキングを掲載している。たとえば、トヨタ自動車、三菱UFJ FG、ソフトバンクグループ、三井住友FG、ホンダ、みずほFGなど自動車大手、メガバンクといった日本を代表する企業の多くがPBR1倍割れとなっている。その要因は分子の株価が低すぎるか、分母のBPSが多過ぎることだ。

   激安株の代表とされる「銀行株」は買いなのかを検証している。

   PBRは0.5~0.6台で、1倍を大きく割り込んでいる。今後の収益力を期待されていないとも、図体が大き過ぎるとも取れるが、ついに「買い時」が始まった、と期待されているという。

   23年3月期に8058億円と過去最高水準に近い最終利益を確保した三井住友FGの太田純社長は、新しい中期経営計画では、29年3月期に最終利益1兆円を達成、現状6.5%のROE(自己資本利益率)を8%に引き上げるという目標を示した。計算上、PBRが1倍となる見込みだ。

   みずほFGの木原正裕社長も、日本企業の時価を上げていくことによって、自社のPBRを上げていく意欲を示したという。

   なお、メガバンクよりもさらにPBRが低いのが地銀だ。「PBRワーストランキング」の上位をほぼ占めている。「出口なし」と指摘している。

   「PBR1倍割れ」企業を狙い撃ちした、アクティビストの戦略を紹介している。

   通称「村上ファンド」の影響下にある投資会社シティインデックスイレブンスは、PBR1倍割れのコスモエネルギーホールディングス(HD)にプレッシャーを与える狙いの声明を公表したという。

   同誌は、東京証券取引所や金融庁が改革に乗り出した今、株主の賛同が得やすい空気が日本の株式市場で醸成されつつあると見ている。

   一方、キャッシュをたっぷりと持ちながら割安で放置されている「激安株ランキング」を掲載している。

   それによると、1位は、アルミニウムの製造に用いるカーボンを利用した製品に強みを持つSECカーボン。2位のバッファローは、オートバックスや焼き肉チェーン店の運営をフランチャイズで請け負う。大化けする可能性を持つ企業だ。

◆特集2は「時計御三家の黄昏」

   特集2の「時計御三家の黄昏」も興味深い。

   セイコーグループ、シチズン時計、カシオ計算機の時計「御三家」の最近事情を追っている。日系時計3社はコロナ禍で時計の売り上げが急落したが、その後そろってV字回復を遂げた。

   しかし、セイコーは他2社に営業利益率で差をつけられている。その一因が、セイコーエプソンとの関係だ。

   高価格帯の製造をエプソンが担っているため、セイコーはエプソンに利益を持っていかれる、という関係者の声を紹介している。だが、グランドセイコー(GS)をはじめとした高価格帯ブランドの戦略が成功しているため、将来的には「独り勝ち」になるとも。

   同族経営から脱したシチズンに対し、セイコーやカシオでは今も創業家が君臨している。アップルウォッチを愛用している評者にとって、日系時計3社の存在感は薄れているが、生々しい人間ドラマを読むと、「時計」の持つ不思議な魅力が見えてきた。

インボイス完全マニュアル

   「週刊東洋経済」(2023年7月1日号)の特集は、「インボイス完全マニュアル」。10月1日の導入まで90日に迫ったインボイス制度の仕組みと問題点を総まとめしている。

   インボイス制度の仕組みを図解して解説している。免税事業者に仕事を発注し、できた商品を仕入れて販売している「買い手企業」からインボイスの影響を見てみよう。

   これまでは、販売先から受け取った消費税30万円から免税事業者に支払った消費税10万円を差し引いた20万円の消費税を納税していた。仕入税額控除が認められていたからだ。

   これであれば、企業も仕入消費税を差し引くことができたし、免税事業者も税益を懐に入れることができたため、「ウィンウィン」の関係だった。

   ところがインボイスが始まると、免税事業者に支払った経費については、仕入税額控除が認められなくなる。つまり、本来は免税事業者が支払うべき消費税を、企業側が肩代わりしなければならなくなる。この場合、企業の負担は10万円も増えてしまう。

◆インボイス導入で、企業がとるであろう対応は?

   今後、企業が取るであろう対応を検討している。

   まず多いのは、免税事業者に対し、課税事業者になってインボイスを発行するよう求めることだ。そうすることにより、企業の負担は変わらずこれまでどおりの条件で取引することができるからだ。

   しかし、免税事業者にとってみれば、適格事業者になった場合、消費税を納税しなければならなくなり、その分の負担が増す。

   これまで通りの取引を、企業に依頼したとしよう。すると、企業は負担を嫌がり、消費税を肩代わりしなくても済むよう適格事業者に仕事を依頼する可能性が高い。そうすれば免税事業者は、仕事を失いかねない。

   国も仕入税額控除を認める「経過措置」を設けている。

   インボイスのスタートから3年間(23年10月から26年9月まで)は、80%、その後の3年間は50%の控除と「時間的猶予」を与えるので、時間をかけて取引条件の変更を交渉することになりそうだ。

◆個人事業主の3つの対処法は?

   個人事業主の対処法もまとめている。大きく分けて3つある。まず、インボイス制度を無視して、これまで通り免税事業者として取引を行うことだ。

   課税売上高が1000万円以下の事業者は、消費税の申告・納税の義務がない。そのため免税事業者のままでいても何ら問題がない。

   このほか、インボイスを無視していい人として、以下の条件を挙げている。

・顧客がインボイス不要の人 美容室、塾、スポーツジム、個人向け飲食店など、一般消費者が顧客の人。取引先が免税事業者または簡易課税事業者だけの人。
・業種的にインボイス不要の人 もともとの売り上げが非課税の人 居住用物件の大家、保険診療のみの診療所など。
・インボイス不要の特例を受けている業種の人 古物商や質屋、農協、漁協、森林組合などに生産物を卸している農家など。
・個人的にインボイス不要の人 提供するサービスが唯一無二の人、地位を確立しているアーティスト、芸術家など。

   一方、インボイスを無視してはいけないのは以下の人たちだ。

・顧客がインボイスを必要としている人 顧客に売上高1000万円超の課税所得者(一般課税)がいる人。ビジネス利用の顧客がいる人(商店、経費利用されている飲食店、個人タクシー運転手、漫画家、俳優、声優など)。
・企業から業務委託契約で仕事をしている人 システムエンジニア、一人親方、トラックドライバー、デザイナー、フードデリバリーなど。

   2つ目は「簡易課税」だ。3つ目の「一般課税」よりも負担が少なければ、選択すべきだという。

   税率ごとの消費税の算出や帳簿への記載といった面倒な作業から解放される。売り上げが少なく、益税を多く得てきた免税事業者ほど、適格事業者の登録をしたうえで、簡易課税を選択するのが最適だという。

   ちなみに、サラリーマンも他人事ではない。

   出張旅費などについてインボイスは不要だが、出張旅費ではない旅費、交通費には注意が必要だという。公共交通機関(鉄道、バス、船舶)に支払った交通費が税込3万円未満であればインボイスの保存は不要という「3万円ルール」がある。

   だが、含まれていないタクシーや航空機は認められないので、インボイスは必要となる。3万円未満の判定は、「切符1枚ごとの金額」ではなく、「1回の取引」で判定されるので、会社から指示があるかもしれない。

   また、会社に内緒で副業をしていた人もインボイスをきっかけにバレる可能性もあるという。「面倒な」制度が始まり、しばらく経理担当者は苦労するだろう。(渡辺淳悦)

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