キノコ生産大手、雪国まいたけの株価が2023年6月21日の東京株式市場で一時、前日終値比110円(11.7%)高の1050円まで上昇した。
前日にキノコを主原料とした代替肉の開発に成功したと発表しており、新たな成長のけん引車が生まれたとの期待感から買いが殺到した。
中期経営計画で示していた有力分野「代替タンパク」の研究...「代替肉」はその成果に
発表内容を確認しておこう。雪国まいたけは中期経営計画で示した新規事業について、「代替タンパク」の研究を有力分野として掲げており、今回の代替肉開発はその具体的な成果と位置づけられる。
自然なおいしさを追求しつつ、原料であるキノコの低カロリー、低脂質、豊富な食物繊維といった特性を生かしたヘルシー志向の製品になるという。2023年度中に最初の製品を発売することを目標に準備を進めている。2024年度以降は、さらに製品バリエーションを広げて事業を展開するとしている。
現状、代替肉市場は大豆由来の成分を主原料にしたものが主流だ。だが、ヘルシーなイメージの高いキノコを原料とすることで、健康志向の高い消費者に受け入れられる可能性はありそうだ、との期待が株価上昇にはっきりと結びついた。
主力のまいたけの国内シェアは50%超 24年3月期、営業利益69.3%減の6億円見込む...背景に、調達コストの高止まり
ここで雪国まいたけの概要を振り返っておくと、本社は新潟県南魚沼市だが、2022年に東京本社を開設し、2本社制としている。
1983年に前身の旧雪国まいたけを設立した。投資ファンドによる株式公開買付けを経て、2015年にいったん旧雪国まいたけが上場廃止。20年に、新たな雪国まいたけとして再上場した。
主力のまいたけの21年の国内シェアは50%超と圧倒的だ。2023年3月期の売上高に占める割合はまいたけが6割、ぶなしめじが2割、エリンギ1割といった具合だ。
2023年3月期連結決算(国際会計基準)は、売上高にあたる収益が前期比10.4%減の422億円、営業利益が56.0%減の21億円、最終利益が60.5%減の11億円だった。
原材料価格の高騰によるコスト増加の半面、主力製品であるまいたけの販売単価が前年度を下回る状況となり、利益が圧迫された。
24年3月期も調達コストの高止まりは続くとして、営業利益は69.3%減の6億円を見込む。
こうした逆風の中で代替肉という期待できる材料が出たことで買いが入ったようだ。(ジャーナリスト 済田経夫)