銀行(国内106行の単独決算)の2023年3月期の預貸率は、62.94%で前年の61.93%を1.01ポイント上回った。3年ぶりの上昇。東京商工リサーチが2023年6月19日に発表した。
預金合計(預金+譲渡性預金)は992兆9418億円で、前年比4.2%増だった。大手行(埼玉りそな銀行を含む、7行)が前年比5.8%増と大幅に積み上げたほか、地方銀行(全国地銀協加盟62行)と第二地銀(第二地銀協加盟37行)でも前年を上回った。
一方、貸出金合計も625兆3億円で前年から5.9%増えた。こちらもすべての業態で増えたが、なかでも大手行の貸出金は前年比7.2%増と大きく伸び、預貸率の上昇を先導した。
大手行、地銀・第二地銀で貸出金の伸びに格差
預貸率は、銀行預金の運用状況を示す経営指標の一つで、預金残高に対する貸出残高の比率を示している。一般に、預貸率が高い銀行ほど、融資姿勢が積極的と受けとめられている。バブル期の大手行(当時の都市銀行)はオーバーローン(預金が貸出金を上回る)状況が目立った。
ただ、預貸率は、銀行の健全性を示す自己資本比率と関連する。一般に、自己資本比率が高いと、経営的な打撃を受けた時の自己回復力や経営の弾力性が高まるので、高いほうがよいとされる。わが国(海外拠点を持たない地域銀行の場合)では、4%以上が求められている。
その自己資本比率を高める方法として、銀行は貸出金を伸ばさないことがある。かつての、いわゆる「貸し渋り」だ。自己資本比率が高いということは、借入金(銀行にとっては貸出金)の返済負担が低く、経営が安定していることになるからだ。
預貸率が高すぎると銀行にとってリスクになり、低すぎると融資姿勢が問題視されるというわけだ。
調査によると、国内106銀行の2023年3月期の預貸率は62.94%(前年は61.93%)で、3月期では2020年3月期以来、3年ぶりに上昇した。
業態別の預貸率をみると、大手行で54.48%。前年の53.77%から0.71ポイント増えた。地銀は74.77%で、同72.81%から1.96ポイント増。第二地銀は77.84%で、同76.23%から1.61ポイント増となり、全業態で上昇した。【図1参照】
貸出金は、地銀が前年比4.6%増、第二地銀が同4.2%増だったが、大手行は前年から7.2%増と大幅に増加。その一方で、預金は大手行が5.8%増、地銀は1.9%増、第二地銀が2.0%増で、大手行は預金流入も大きかったため、預貸率の上昇はわずかにとどまった。
東京商工リサーチは、
「大企業や優良企業などの顧客を多く抱える大手行は、運転資金だけでなく設備資金などの資金需要も旺盛で、貸出金を大幅に伸ばしたものの、コロナ禍からの業績回復が遅れ、資金繰り支援策の副作用で過剰債務を抱えた中小企業は多い」
と指摘。こうした企業を支える地銀・第二地銀は貸出金が鈍り、伸びに差が出た。今後については、
「銀行に預金流入が進むが、過剰債務を抱えた企業に対してリスクを取りながら、貸し出しや企業の経営再建にどう取り組むか。銀行の目利き力が試されている」
とみている。