プロジェクト勝利のために
著者は2年目の冬にジュニアコンサルタントに昇格した。自信を持ち始め、プライドが肥大化し、関係会社のリーダーと衝突する。やがて、マネージャー昇格の年次になっても実現せず、ショックを受ける。そこで学んだ教訓とは――。
〇「顧客の歴史に敬意を払え」-クライアントを多角的に理解する
現場とのリレーションを深めるためには何よりも相手へのリスペクトが肝心だ。クライアントの会社や業界がどのような歴史的経緯で発展し、今の事業を行うにいたったかをクライアント以上に理解し、その歴史と価値に敬意を払おう、と強調する。
マクロレベル、ミクロレベルでの業界把握の方法、企業の組織一般の知識について説明している。 そして、いよいよマネージャーになる。
だが、歯車が狂い始める。提案がクライアントにまったく刺さらない。プロジェクトの予算はオーバー、クライアントの信頼を失い、上司に叱責された著者は、自ら異動を願い出る。
〇「真剣にやってその程度なら降格しろ」-マネージャーの絶対条件
プロジェクトを勝利に導けることが、マネージャーの唯一にして絶対的な条件だ、と説いている。それには、案件の管理、顧客獲得・事業成長、人材育成が欠かせないという。
新しい職場で著者は、自己改造プログラムに取り組んだという。英語学習とソリューション・アーキテクトの資格取得だ。そして、「勝てる場所で勝負する」という言葉を頼りに、得意分野で活躍する。
若手ビジネスパーソンの間では、「ぬるい職場を辞めて、スキルを伸ばせる会社に転職したい」という動きがあるようだ。それを促すような人材会社のテレビCMも流れている。コンサルティング会社は、新卒でも第二新卒でも人気の的になっている。
スピードと体力、気力が求められる厳しい仕事の実態を、本書はあますところなく描いている。今年上半期でイチ押しのビジネス本だと思った。
コンサルティング業界志望の人は必読。そうでない人にとっても「仕事とは何か?」を問いかけてくる内容に大きな刺激を受けるだろう。一読を勧めたい。(渡辺淳悦)
「コンサルティング会社 完全サバイバルマニュアル」
メン獄著
文藝春秋
1980円(税込)