春闘の賃上げ効果が、サービス価格上昇にも反映されてくる?
「今後は春闘の賃上げ効果が、徐々に物価上昇に反映されてくるだろう」と指摘するのは、大和総研シニアエコノミストの久後翔太郎氏と、エコノミスト中村華奈子氏だ。
2人のリポート「2023年5月全国消費者物価 エネルギー価格の低下でコアCPIへ減速も、物価の上昇基調は依然強い」(6月23日付)のなかで、消費者物価指数への「一般サービス」の寄与度の示すブラフを紹介した【図表2】。
これを見ると、2022年後半から「旅行関連費」「通信娯楽関連費」「外食費」「教育関連費」などの「一般サービス」の寄与度が上昇に転じ、2023年にかけて大きくピークに達していることがわかる。
こうした「一般サービス」価格は人件費が占める割合が高いため、価格の上昇は賃金の上昇率と連動性が高い。2人はこう指摘する。
「2023年春闘では、賃上げ率が大幅に高まる見込みだ。日本労働組合総連合会(連合)が集計した定期昇給相当込みの賃上げ率は加重平均で3.66%(6月1日時点)と、30年ぶりの高水準となった。
記録的な物価高や労働需給のひっ迫などを背景に、中小企業でも2%を超えるベースアップ率での妥結が相次いだ。こうした賃金上昇率の高まりを受けて、賃金上昇率と連動性の高いサービス物価の上昇基調が強まるとみている」
そして、こう結んでいる。
「企業の価格設定行動が足元で積極化しており、賃上げによる投入コストの増加分を販売価格に転嫁する動きが一段と加速する可能性がある」
(福田和郎)