2025年、ベテラン層の大量退職で人手不足が予測されている、建設業の「2025年問題」。そんななか、最近増えている建設業に就職した若手社員たちはどんなことを考えているのだろう?
建設業界に特化した人材サービスを展開するウィルオブ・コンストラクション(東京都新宿区)は2023年6月23日に、「建設業界で働く若手社員の意識調査」を発表した。調査によると、建設業で働こうと思ったきっかけは「手に職をつけたいから」という理由が最多となった。
一方で、実際に働いてみて「後悔したこと」には「手に職をつけるために時間がかかる」が男性45.6%、女性35.3%と、どちらも上位に上がっていることなどから、「研修の時間や内容の充実」を求める声が、とくに男性ではおよそ5割を超え、課題として上がっている。
建設業に入って良かったこと...女性では「仕事のスケールが大きい」「職場環境が整っている」が目立つ
この調査は2023年2月20日から3月3日までの間、全国の建設現場で勤務する20代から30代、かつ建設業界での就業年数が3年以内の若手社員141人に、オンライン上でのアンケート調査を実施した。
建設業界はいま、さまざまな課題を抱えている。たとえば、残業時間の上限規制がはじまる「2024年問題」や、ベテラン層の退職による「2025年問題」などがそれだ。ところが、同社によると、「直近10年間に建設現場で就業する新卒社員は増加傾向にある」という。
今回の調査は、未経験から建設現場に就業する若手社員の不安解消を目的として、課題意識などを調べるためにおこなわれた。
はじめに、建設業界の若手社員に業界に飛び込んだ理由を聞いてみると、男性の1位は「手に職をつけたいから」(37.0%)、2位は「やりがいや達成感を感じられそうだから」(24.0%)と、「モノづくりやスケールの大きい仕事に興味があったから」(24.0%)が同率という結果になった。
一方で、女性はどうかというと、1位は男子と同じく「手に職をつけたいから」(39.0%)、2位が「色々なスキルと身につけられて、自己成長につながると感じたから」(31.0%)、3位は同率で「モノづくりやスケールの大きい仕事に興味があったから」(24.0%)、「身近な人が建設業界で働いているから」(24.0%)という結果だった。あらためてこうして見ると、建設業で働くきっかけには男女差があるようだ。
続いて、「建設業で働いてよかったこと」を聞いてみると、男性は「手に職を付けられる」(28.0%)、「国家資格が取れる」(26.0%)、「やりがいや達成感が大きい」(26.0%)、「色々なスキルを身につけられて、自己成長につながる」(26.0%)となった。
女性では、「手に職を付けられる」(39.0%)、「モノづくりやスケールの大きい仕事に携われる」(33.0%)、「色々なスキルを身につけられて、自己成長につながる」(25.0%)となった。
同社は、「質問を聞いたところ、『手に職を付けられる』と答えた割合が男女ともにトップ(男性28.0%/女性39.0%)でした。前問の『建設業界に入ろうと思ったきっかけ』として最も多かった回答も『手に職を付けたいから』であったことから、入社前に思い描いていたことを入社後に実現することができた、と感じている若手社員が多いことがわかりました」としている。
若手社員の感じる業界の課題「休み少ない」「給与・賞与すくない」「キャリアイメージが持てない」
一方で、「建設業で働いて後悔したこと」を質問した。その結果、男女ともに多く目立っているのが、「手に職をつけるまでに時間がかかる」(男性:45.6%、女性:35.3%)、「労働時間が長い」(男性:26.7%、女性:39.2%)、「仕事量が多い」(男性:25.6%、女性:19.6%)、「給与が低い」(男性:24.4%、女性:17.6%)、「研修制度が整っていない」(男性:21.1%、女性:11.8%)などだ。
同社は、「男女で比較すると女性若手社員の29.0%が『自分の将来のキャリアイメージができない』と回答し、男性(16.0%)より13.0%高い結果となりました。男性と比べると、建設業界で働くロールモデルになる女性がまだ少ないことが要因ではないかと考えられます」とした。
最後に、「若手社員が働く上での建設業界の課題」を聞いたところ、目立っているのが「給与や賞与を上げたほうが良い」(男性:72.2%、女性:60.8%)、「休日を増やしたほうが良い」(男性:57.8%、女性:52.9%)などの条件面での改善を望む声が挙がっている。
また、男性では3番目(53.3%)に、女性では4番目(39.2%)に「研修の時間や内容を充実させたほうが良い」という回答が高かった。
同社によると、「手に職を付けたい」と建設業界で働くことの魅力を感じて入社する若手が多いものの、専門性が高くスキルを取得するまでには時間を要するため、現場での教育・育成体制を充実させることが重要であると感じている若手社員が多い、とみている。
同社では調査を総括して、以下のようにコメントしている。
「労働時間、給与や休日など建設業界の条件面に課題を感じている若者も多い反面、手に職を付けられることの価値やスケールの大きい仕事に携われることのやりがいを感じられている若者も多いため、条件面、研修内容の改善などを進めていくことで、今後より多くの若者が活躍し、働きやすい業界になっていくのではないでしょうか。
当社でも、未経験で建設業界に入社する若手社員に向けた入社時研修だけでなく、資格取得も含めた継続的な研修を行っていますが、今後も若手がより活躍できる環境を整えるべく、建設業界に対しての啓発活動も継続してまいります」