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「ああ、転職して本当によかった!」40~50代中途入社者が勧める「育成環境に優れた企業ランキング」...「若手に負けられない!」向上心に火をつける魅力

   経験やスキルがありながら、「学び直し」(リスキング)の手間と終身雇用の安定さの間で揺れ動く40~50代。そんなミドル層が新天地に飛び込み、「ああ、転職して本当によかった!」と思える企業はどこか。

   転職のためのジョブマーケット・プラットフォーム「OpenWork」を運営するオープンワーク(東京都渋谷区)が「40~50代の中途入社者が評価する『育成環境が優れた企業ランキング』」を、2023年6月22日に発表した。

   上位30社の企業には、どんな人材育成システムがあり、中途入社したミドル層のやる気に火をつけているのか。2万3000人のクチコミから浮かぶ特徴は?

  • ああ、転職してよかった(写真はイメージ)
    ああ、転職してよかった(写真はイメージ)
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1位ITコンサルのナイル、2位中外製薬、3位日本IBMデジタルサービス

   「OpenWork」は、社会人の会員ユーザーが自分の勤め先の企業や官庁など職場の情報を投稿する国内最大規模のクチコミサイト。会員数は約560万人(2023年4月末時点)という。

   「OpenWork」では、企業の評価を「待遇面の満足度」「社員の士気」「風通しの良さ」「人事評価の適正感」など8つの指標を5段階で評価している。今回の調査では、これらの指標のうち特に「育成環境に優れている」という評価に注目して、2万3000万人の中途入社した40~50代社員による会社評価スコアでランキングを作成した。

   岸田政権は6月7日、「新しい資本主義」の実現に向けた行動計画「骨太の方針」(経済財政運営と改革の基本方針2022)の原案を公表した。その中で、「成長分野への労働移動の円滑化」が重要だとして、「転職の促進」を掲げている。

   企業のリスキリング(学び直し)支援だけでなく、転職を希望する個人に、最大年間24万円の「学習費」を出すなどの施策が盛り込まれている。

   ミドル層にとっても、1つの会社に「長く勤め上げる」時代が終わりをつげていると言えるだろう。

(図表)40~50代の中途入社者が評価する「育成環境が優れた企業ランキング」(OpenWork作成)
(図表)40~50代の中途入社者が評価する「育成環境が優れた企業ランキング」(OpenWork作成)

   「OpenWork」のランキングでは、1位にITコンサルティングサービスのナイル、2位に製薬大手の中外製薬、3位に日本IBMグループのシステムインテグレーターの日本アイ・ビー・エム デジタルサービス、4位に大手証券の野村證券、5位にNTTデータグループのコンサルティング会社クニエが入った。

   さらに、6位にはイタリアに本社を構える経営管理会社Tagetik Japan、7位にメガバンクの三井住友銀行、8位にエヌ・ティ・ティ・データグループのシステムインテグレーターのエヌ・ティ・ティ・データ先端技術、9位にIT大手のエヌ・ティ・ティ・データ、10位に米国に本社を構えるクラウドサービスのセールスフォース・ジャパンという結果になった【図表】。

   また、上位30社までのランキング全体を見ると、「システムインテグレーター、ソフト開発、システム運用」業界が30社中13社を占めており、ほかにインターネットサービスや通信、化学、コンサルティングといった業界の企業がずらりと並ぶ。

「嫌でも若手に刺激を受ける」「自学しないと置いていかれる」

若い人には負けられない(写真はイメージ)
若い人には負けられない(写真はイメージ)

   ランクイン企業の40~50代の中途入社者のクチコミを見ると、入社形態を問わず研修育成制度が充実し、本業とは直接関係がない内容でも学習支援してもらえる環境を挙げる声が多かった。

   また、「若手に負けられない」「嫌でも刺激を受ける」「自学しないと周囲に置いていかれる」といった、積極的にスキルアップをしたくなる、焦燥感や向上心の生まれやすい組織風土があることも印象的だ。具体的にクチコミを見ると――。

野村證券「日々のニュースが仕事に直結するスピードを感じながら、営業スキルも磨かれ、証券知識も豊富になり、自分の裁量で仕事ができます。成長、キャリア開発するためのサポートも非常に充実しており、直接仕事に関係ないような資格取得にも補助がでます」(支店営業、女性)
日本アイ・ビー・エム デジタルサービス「常に高いスキルを求められるため継続的に自己研鑽が必要ですが、ITスペシャリストとして自信と誇りを持って仕事に取り組むことができます。仕事で求められるスキルをしっかりと習得していくことができていれば、自然と業界で必要とされるさまざまなスキルを身につけられると思います。その反面、努力を怠って周りについていけなくても置いていかれるだけなので、本人の高い意識が必要」(システムエンジニア、男性)
ナイル「若い社員の意欲が高いので、負けていられないという気持ちでモチベーションが向上しました。資格取得支援の社内制度もあるので、語学の勉強がはかどりました」(コンテンツ管理、男性)
中外製薬「社内には自己成長のためのプログラムが多々ある。活用次第では能力開発も可能であるが、興味ないとただ惰性で仕事をするだけになる。周囲が能力開発に敏感な人が多いため、嫌でも刺激を受けて能力開発にいそしんでいる」(企画、男性)
プルデンシャル生命「知識向上に関するもの、マインド向上に関するもの、両者において、さまざまな社員限定のコンテンツが用意されているので、業務内容以外の法律や社会保障など、たくさんの学習が、自分の好きな時間にできます。また、非常に自己成長欲の高いひとが先輩方に多いので、日々刺激を受けています」(営業、女性)
エヌ・ティ・ティ・データ「毎月のように何かしらの研修があり、またAWSやSalesforceなどの3rd Party(第三者の外部企業)系の研修も自由に受けられるため、成長速度は速いと思う。悪く言うと勉強しなければならないことが多く、土日や平日深夜に勉強して追いつく必要がある」(法人ソリューション、男性)

キャリアプランに応じて異動も柔軟、モチベーションどんどん上がる!

刺激を受けながら楽しく働ける(写真はイメージ)
刺激を受けながら楽しく働ける(写真はイメージ)

   ところで、キャリアアップのために、具体的にはどんな育成システムや学習支援の環境が整っているのだろうか。40~50代中途入社者のクチコミを見ると――。

ナイル「各自スキルアップ制度(書籍購入、セミナー費用補助支援)を有効活用して当たり前のように成長を図ろうとする環境。ある業種で満足した人向けに事業部やチーム間を体験・異動できる制度がある」(デジタルマーケティング、男性)
クニエ「教育プログラムが充実しており、社内にコンサルタント経験者による教育プログラムが運営されています。経験の浅い人でも成長しやすい環境が整備されています。所定の研修を受講しなければプロモーションできないため、業務と並行しての受講はかなり大変です」(シニアコンサルタント、男性)
エヌ・ティ・ティ・データ「社員教育に力を入れており、多種多様なトレーニングを受ける機会がある。また、キャリアプランに応じて社内の異動も柔軟に受け入れてもらえるので、モチベーション高く新しいことにチャレンジできる」(主任、男性)
ボストン・サイエンティフィック ジャパン「教育の材料は揃っているので、自己成長に関しては本人次第なところはある。キャリアに関しても、定期的にほかの事業部の話を含めて、異動できる仕組みになっている」(エンドスコピー=消化器分野担当、女性)
富士通「ポスティング制度を活用すれば、自分でキャリアを考えて行動に移すことができます。社内教育も豊富なので、リスキリングもできます。反対に、年功序列的なキャリアが好きな人には向かないと思います」(システムエンジニア、男性)

   若い人にまじって、仕事に、勉強に、とあふれるばかりの向上心で頑張るミドルたち。厳しいが、やりがいを持って働く姿が伝わってくる。こんなに元気で経験豊富なミドルが入ってきたら、若い人にとっても、会社にとっても、鬼に金棒だろう。

   調査は、「OpenWork」に投稿された、40~50代の中途入社者による会社評価レポート2万3276件を対象データとした。

(福田和郎)