リスキリングにはどのような成果があるのだろうか?
総合人材サービス・パーソルグループのパーソルイノベーション(東京都港区)が展開するリスキリング支援サービス「学びのコーチ」では、リスキリングに関する定点調査を四半期ごとにおこなっている。2023年6月20日、2回目となる調査結果を発表した。
今回の調査によると、リスキリングの評価は「大きな成果が出たと感じている」が18.2%で、「成果を実感できた」が45.5%となり、63.7%の回答者が成果を感じていることがわかった。
また、具体的な効果として「業務の効率化」や「新規事業の立ち上げ」に役立っていることなどが上がっており、DX化やデータ活用のリスキリングには一定の効果があるようだ。
リスキリングの実施、トップダウン形式が主流 大企業ほどその傾向が高く
この調査は2023年5月23日から30日まで、全国の企業に勤めている660人を対象に、インターネットリサーチを行った。
なお、企業属性は、大企業=従業員数が300人以上の企業。中小企業とスタートアップ=従業員数が300人未満。新規事業開発と成長を経営の主軸に置かない企業と、従業員数が300人未満で、新規事業開発と成長を経営の主軸に置く企業とした。大企業の子会社やグループ会社は含まれない。
はじめに、「直近1年の間で、従業員のリスキリングに関する取り組みを行いましたか?」と聞いたところ、「実施した」は「41.6%」となり、前回調査の「39.1%」から2.5ポイント増加した。
企業規模別では、大企業では「実施した」が「64.1%」、中小企業・スタートアップでは「28%」となった。
続いて、「リスキリングの取り組みは、トップダウン(経営主導)型・ボトムアップ(個人主導)型のどちらで行っていますか?」と質問。その結果、「トップダウン型」の回答は「79.5%」となった。
規模別では、大企業は「トップダウン型」が「85.1%」で、中小企業・スタートアップは「71.6%」。業種別では製造業が「トップダウン型」が「75.3%」、通信情報サービスは「67.3%」という結果が得られた。
では、リスキリングの取り組みでは、具体的にどのようなスキルの取得を重視しているのだろうか。
これについて聞いてみると、1位「データ活用」(35.6%)、2位「ITプロジェクトマネジメント」(34.1%)、3位「クラウド活用」(31.4%)となった。
前回調査とは「データ活用」と「ITプロジェクトマネジメント」が逆転する結果だったという。もっとも、いずれにしても、DX化の推進やITスキルの習得を重視する姿勢には変化はないようだ。
また、リスキリングを実施する企業には、「企業としてのリスキリングの取り組みはどのように評価されていますか?」と聞いた。それによると、「大きな成果が出たと感じている」が「18.2%」、「成果を実感できた」が「45.5%」となり、あわせて「63.7%」がリスキリングで成果を感じている。
また、成果実感している企業の取り組み方は、「トップダウン型」が「67.7%」と高いことがデータから読み取れる。
さらに、具体的な効果についても質問した。それによると、「業務の効率化」(49.4%)、「新しい職種・役割にアサインできた」(44.0%)、「新事業の立ち上げ」(43.5%)などが上がっており、リスキリングは具体的な成果を出しているといえそうだ。
企業のAI活用...およそ5割が活用&導入準備中
一方で、AI活用に関する質問を行った。
勤めている企業で「どの程度AI(ChatGPT等)を業務で活用していますか?」と聞くと、「AIを活用している、または導入を検討している」(AIを導入し本格的に活用している:11.5%、AIを試験的に活用している:23.5%、AIの導入を準備・検討している:16.5%の合計)の回答が「51.5%」となり、今回の調査では、約半数が活用または、導入を検討しているようだ。なお、企業規模別で見ると、大企業では「69.7%」と関心が高かった。
こうした調査結果について、『学びのコーチ』事業責任者の柿内秀賢氏は、以下のように見ている。
「今回はリスキングの成果実感を軸に調査し、成果実感が高いのは『トップダウン型(経営主導)』かつ『成果指標を運用している』グループという結果となりました。
私たちのお客さまからも『経営陣の強い意志を感じる』ことが多く、現場の肌感覚とも一致する結果だと考えています。テクノロジー人材を採用するだけではなく『自社の社員のリスキリングにも力を入れて経営目標を達成する』というお客さまの姿を拝見すると、本質的な『人的資本経営』の形を垣間見るように思います」