大蔵省の「奴隷」だった経済学者が、財務省に反旗を掲げるワケ

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   多くの日本人が消費税の引き下げよりも、据え置きないし増税を支持しているという。

   本書「ザイム真理教」(三五館シンシャ)は、「財政均衡主義」という財務省の「教義」が、いかに深く国民やマスメディア、政治家に浸透し、国民生活を破壊しているのかを糾弾する、「警世の書」。いま話題になっている。

「ザイム真理教」(森永卓郎著)三五館シンシャ

   本のタイトルは際物っぽいが、公的統計や公表資料にもとづき、中身はきちんとしている。

   著者の森永卓郎さんは、獨協大学経済学部教授の経済アナリスト。東京大学経済学部を卒業後、日本専売公社(現・JT)の主計課で、予算を握る当時の大蔵省(現・財務省)に絶対服従を強いられた体験から書き出している。

   「私は大蔵省の『奴隷』だった」とまで書き、「屈辱的」な経験を披露しているが、私怨を晴らすためにもちろん執筆したわけではない。

   自分の一言で、思い通りに人が動く経験を重ねていくうちに、自分が全知全能の神であると勘違いしてしまう。「そこにザイム真理教の源流があるのだ」と指摘する。

「財政均衡主義」は正しいのか?

   森永さんが大蔵省の「奴隷」をしている頃、聞かされたのが、「財政再建元年」という言葉だ。石油ショックに伴う経済対策で国債を発行したため、大量償還が始まろうとしていた。

   大蔵省の官僚は、10年の償還期限を迎えたら、その元本を返済しなければいけないと思い込んでいたというのだ。

   余裕がなければ借り換えをして、また10年後に先送りしてもいいし、日本銀行に国債を買わせてもいい。しかし、法学部出身者が多く、あまり経済学を勉強していない彼らは「財政均衡」――すなわち、税収の範囲内に歳出を収めるという、経済学的にはありえない話を「正しい」と思い込んでしまったという。

   長い間、大蔵省や財務省にいた元官僚は、学者になっても「財政均衡主義」を主張し続ける。何人か具体的にその主張を取り上げ、論破している。

   「洗脳」されたのは、学者やマスメディアばかりではない。政権を取った当時の民主党の幹部も財務省に取り込まれていく。皮肉なことだが、森永さんは安倍晋三元首相が書いた「安倍晋三回顧録」(中央公論新社)から次のように引用している。

「時の政権に、核となる政策がないと、財務省が近づいてきた、政権もどっぷりと頼ってしまう。菅直人首相は、消費税増税をして景気をよくする、といった訳の分からない論理を展開しました。民主党政権は、あえて痛みを伴う政策を主張することが、格好いいと酔いしれていた。財務官僚の注射がそれだけ効いていたということです」

   「注射」とは財務省によるマインドコントロールを意味する。

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