値上げ加速、映画料金「2000円」主流に...映画ファン怒り殺到、サービスの向上を!「ギリギリまで決まらない上映スケジュール、何とかして」

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   大手シネマコンプレックス(シネコン)のTOHOシネマズが2023年6月1日に一般料金を1900円から2000円に値上げするなど、全国の映画館で値上げの動きが止まらない。

   そんななか、帝国データバンクが6月22日、「特別企画:2023年『映画チケット』価格改定動向調査」を発表した。それによると、電気代や人件費増加が重荷になり、映画代は「2000円」が主流になるという。

   映画ファンの間からは「値上げはともかく、上映スケジュールがギリギリまで決まらないなど、基本的なサービス向上を図るべきだ」という批判も殺到している。

  • さあ、お楽しみはこれからだ(写真はイメージ)
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「2000円化」の理由は、電気代の高騰と人件費の増加

   帝国データバンクが、大手シネコンや地域の大規模映画館など、全国50社の大手映画館に聞くと、全体の64%にあたる32社が2022年以降に「映画チケット」を値上げした。このうち、全体の5割超にあたる27社では、2023年以降の値上げだった【図表1】。

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(図表1)主要な大手映画館の2022年以降の値上げ割合と、値上げする要因(帝国データバンク調査)

   チケット料金は据え置いたものの、ポップコーンやドリンクなどの館内飲食、3Dメガネなどの料金を値上げしたところも1社あった。

   帝国データバンクの調べによると、値上げ前後のチケット料金を比較すると、一般(通常)料金の値上げ前(2021年以前)金額は「1900円」(29社)のほか、「1800円」が中心だった。

   しかし、2023年以降は「1900円」から価格を引き上げる動きが目立ち、50社のうち4割超の21社が、2023年6月以降に通常料金を「2000円」に値上げしている。

   シニア料金では2022年以降、4割超の映画館が「1300円」の設定としたほか、レイトショーでも、2021年まではすべての映画館で「1400円以下」だったのに、2022年以降は「1500円」になった企業が18社に上った【図表2】。

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(図表2)映画のチケット別の価格帯の推移(帝国データバンク調査)

   いったなぜ、値上げの動きが加速しているのか。

   値上げの理由が判明した24社のうち、最も多かった要因は電気料金などを中心とした「水道光熱費の増加」(18社)で、値上げ理由の約7割を占めた。次いで多いのが、アルバイトなどの「人件費の増加」(16社)、「原材料価格の上昇」(15社)などだ【再び図表1】。

   スクリーンに映像を映すプロジェクターなどの館内設備や、キャッシュレス決済端末など最新機器導入といった「最新設備への投資」(16社)も目に付いた。2000年代初頭にオープンした映画館では、機材修理やメンテナンスなど設備リニューアル時期に差し掛かるものも多く、値上げへの理解を求めるケースが見られた。

   帝国データバンクではこうコメントしている。

「主流だった1800~1900円の価格でも割高感を感じる利用者が多かった。今年6月以降は、大手シネコンを中心に『2000円化』の動きもあり、利用者と映画館で価格改定の受け止め方は異なっている。テーマパークなどサービス価格を引き上げるケースも目立つなか、映画館の料金値上げが利用者に受け入れられるかが今後の注目点となる」

   なお、ニュースメディアのVOIX(東京都港区)が2022年10月31日に発表した「映画館の利用に関する調査」(500人が対象)では、映画館の料金について「高い」「やや高い」と回答した人は94.6%に達するなど、映画館の料金はかねてからの関心事だった。

映画館は高い...2~3か月待てば、家で「配信」を見られる

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映画館で映画を楽しむ女性(写真はイメージ)

   こうした映画館の値上げの動きを、映画ファンはどう受け止めているのか。

   ヤフーニュースコメント欄では、行動経済学が専門の一橋大学経済学研究科の竹内幹准教授は、

「コスパ(コストパフォーマンス)=費用対効果ならぬ、タイパ(=タイム・パフォーマンス)も考えなくてはいけません。お客さんは、2000円を支払うだけでなく、その『貴重な時間』も支払いながら、映画をみるわけです。最近の映画は長くなってきたようです。そこには、チケット料金に見合う価値を提供したいという製作側の事情もあるのでしょう」

   と指摘。そのうえで、経済学の観点から、

「ただ、その分、タイパは悪くなっているのです。わざわざ大画面で見るために、映画館が決めた時間に合わせていくよりも、カラオケボックス式に、中規模のホームシアターを借りて好きな時間に好きな映画を観る方が、コスパ・タイパともによいのかもしれません。インフレ、本番。すべてのモノ・サービスの価格が上がり、それに合わせて賃金(労働の値段)も上がって、1周する。このサイクルが落ち着くまで値上げは続くでしょう。その過程で淘汰がおき、そのあとに残るものが『勝ち組』となる」

   と説明した。

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子どもはアニメ映画が大好き(写真はイメージ)

   とはいえ、やはり「値上げ」に対しては、映画ファンの批判が相次いだ。

「2000円は高いです。7月上演の日本フィルハーモニー交響楽団の(夏休みコンサート)チケットは3200円(B席:大人)でした。それも、クラシック・バレエ・童謡の3部です。映画館での上映は1000円?1500円が妥当かなと思います。プラスアルファで舞台挨拶など出演俳優さんのお話しが聞けるとかなら、2000円の価値があるかもしれませんけど」
「いつも行っている所は、水曜日がサービスデーで通常料金が1200円、年間500円払ってメンバーになると、火曜日がメンバーズデーで同じく1200円で見られます。(編注:そう考えると、通常料金の)2000円は高いです」
「映画はかなり見に行っているほうだと思いますが、価格については疑問に思うこともありますね。ミニシアター系からアニメ、ハリウッド超大作まで金額がすべて同一なのは適正なのでしょうか。ゴリゴリに作りこまれたマーベル系映画と日本のアニメ実写版を同じ土俵に立たせたら、そりゃあアニメ実写の出来にクレームが付くのも仕方ないのかなと思います。
いろいろな事情があるのかもしれないが、平日の映画館の入りを見ると、人に来てもらうことをもう少し考えてもいいのではないかと思います」

   また、映画館は高いので、「配信」で見ているという人もいまは多いようだ。

「できるだけ前売り券とか、水曜日の割引を選んで見ていますが。でも、配信にくるのが早いですよね。『シン・仮面ライダー』(2023年3月公開)が7月にはアマゾン・プライムのみとはいえ、配信で見られます。映画館とはいろいろと違いますが、2~3か月待てば家で見られると考えると、『ちょっと興味がある』くらいの作品は見送ってしまうかも」

ギリギリまで決まらない上映予定と時間、こんな不便な娯楽はあり得ない...

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大型シネコンが入った東急歌舞伎町タワー(東京都新宿区)

   一方で、「昨今の物価上昇、特に電気代を考えると仕方ない」と、値上げに理解を示す声も少なくなかった。ただし、その分、「お客へのサービス向上に努めよ」という意見が殺到した。たとえば、こんな声だ。

「映画館は好きなので、多少の値上げは構わないが、上映スケジュールが週単位で、ギリギリにならないと決まらず、時間さえ間近にならないと分からないのはどうにかならないのかな。客の入りで決めているのは分かるが、せめて最低の上映期間くらい教えてほしい。
ひどいと2、3週間で終わるものもあり、毎回開始すぐに見に行けるわけじゃない。それで見逃した作品が何個もある。週末見に行きたいのに、2、3日前にならないと席も取れず、時間も分からないから予定も立てられない。世の中いろいろと便利になっているのに、すごく不便なまま。こんなに予定を立てられない娯楽って、ないと思う」
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映画館に行くより、テレビで配信映画を見る人が増えた(写真はイメージ)

   この意見には、共感と賛同の声が渦巻いた。

「特にシネコンが多くなり、ネット予約が当然になってから、そうなったと思います。子どもの頃は映画の上映時間は新聞や雑誌などの印刷物に何日も、何週間も前から発表されていた。
需要に応じて上映スクリーンを増やしたり、減らしたり、変更したりして最大限儲けようとしているのだろうが、ユーザーにとっては不満が募るやり方だし、見たいものも見られなくて映画館に足を運ぶ機会も減ってしまうのになあ」
「まったく同じことを思っていました。今やAIでかなり先の需要も予測できるだろうし、需要に応じたチケット価格(ダイナミックプライシング)にすれば無駄な空席も減らせると思う。客足にあわせてスケジュールを決めるのではなく、ある程度スケジュールは決めておいて、もっと足を運びやすくなるような方策をいろいろと考えてほしい」
「わかるわ~。大規模予算、全世代向き作品だと、上映期間も長いし、本数も多い。その反面、マイナー作品になってくると、一瞬(その週末逃したら終わり)という作品もありますものね。なので、映画好きで本数を見る人ほど不自由が増えています。
香港系やフランス系、アジア作品全般なんかが好きなので、そういうことは多々あります。あと、映画祭やウイーク的なイベント上映のみという作品もありますし、そういうのは、遠くても無理して見に行ったりしたりもします」

   インターネット時代、便利になっているはずなのに、本当の映画好きが、本当に見たい映画を見られる機会がどんどん失われている。どうする、映画館?(福田和郎)

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