なぜ彼らはトップ営業パーソンなのか? ふつうの人との違いは、たったひとつ...業種が違っても必ず実践していること(大関暁夫)

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   直近の連載では、営業の5ステップである「予備調査⇒カットイン⇒ヒアリング⇒セールス(プレゼンテーション)⇒クロージング」と、+1ステップの「継続アプローチ」を説明してきました。

   今回からは、テーマ替えです。「営業管理」に視点を移して、着実に実績が上がる営業のあり方を考えます。初めに「営業管理」に関して、私が実際に現場で体感してきた経験をもとに、確信を得ていることから話を始めます。

「営業本」は役立つのか? よく「おすすめ本」の質問を受けるけれど...

   営業担当者の多くは、1冊や2冊の「営業本」を読んでいるものです。営業本とは、書店のビジネス書コーナーで見かける、営業活動で実績を上げるためのノウハウを指南してくれる本です。

   著者はたいてい大手企業で営業職を経験し、そこで目覚ましい実績を残してきたいわゆるトップ営業経験者で、営業コンサルタントを自称している方々です。

   私が営業の現場で担当者の方々とお話をする時、「おすすめの営業本はありますか?」とか、「どんな営業本が役に立ちますか?」といった質問をよく受けます。この質問は裏を返せば、「営業本は何冊か読み参考になったけれど、大いに役に立つところまではいかなかった」ということを言っているのではないかと思うのです。

   実際、さまざまな業種の職場で、営業担当者に営業本について尋ねてみると、読んだことがある人の大半はさほど実績向上にはつながらなかった、と話しているのです。

   私に言わせれば、どの営業本でも実績を上げた人たちがその経験にもとづいて書いている本であり、出版社も読むべき内容であると思ったからこそ、書籍化しているわけですから、それなりに有益な内容は盛り込まれているはずだと思います。

   それなのに、大半の営業担当者が営業本を読んでも実績向上にはつなげられていないとしたら、その理由は何なのでしょうか。

   その理由らしきものは、現場で複数のトップ営業担当者を見ていると分かります。ふつうの営業担当者とトップ営業担当者には、ひとつ大きな違いがあるのです。

   それは、トップ営業担当者は業種が違っていても、例外なく「自己管理」ができているということです。

   自己管理ができるとはどういうことか。自分でやるべきことを決めたら、手を抜くことなく継続してやり続けることができる――言い換えれば、「愚直に取り組む」ことができているのです。

   彼らは決まって、「一日最低〇件アポイントを入れる」とか、「毎月月初にその月のクロージング候補を○社挙げて計画的に訪問する」とか、「営業訪問前には、どこに行く際も必ず〇と×と△は調べてから行く」とか......。

   自分自身の営業活動のルーチンワークを決め、それにしっかり継続して取り組むというやり方をとっているのです。そして、一度やると決めたことは、安々とはやめない、ということもまた共通しています。

大半の人は「自己管理」ができない... そこで大事なのが「営業管理者」の存在

   プロ野球米大リーグで大活躍を続ける大谷翔平選手が、投手と打者の二刀流という前人未到のやり方で、大きな実績を上げているのも同じでしょう。

   もちろん、もともとの資質の高さもさることながら、日々自身で決めたルーチントレーニングを、一日も欠かすことなく愚直に続けてきたその結果が、誰もなし得ていない大記録を作り上げているのです。

   営業本の著者たちも、自分自身が決めた営業ルーチンを自己管理のもと、愚直に継続して取り組んだことで、営業本として紹介できるような、大きな実績を上げてきたのに違いありません。

   それを読んだ悩める営業担当者が、「参考にはなったけど、実績にはつながらなかった」のは、自己管理ができないがゆえにやるべきルーチンを続けられない。あるいは、1、2か月やってみたけど、結果が出ないのでやめてしまった――そんな理由からなのです。

   ここで重要なことは、自己管理ができているのはごく一部の優秀営業担当者だけだということです。すなわち、大半の営業担当者は、自己管理ができていないのです。

   では、大半の営業担当者が実績を上げていくためには、どうすればいいのでしょう。解決策は簡単です。自己管理ができないのなら、発想を変えて、他人に管理をしてもらえばよいのです。すなわち、「営業管理者」を選任して、営業担当者をしっかりと管理をすればいいだけの話です。

営業管理者は、担当者と日々伴走するスタイルで 管理の仕事には、専念するべき

   営業管理者は、まず担当者がやるべきことを決め、それを愚直に続けられるように、日々伴走しながら実績が上がっていくのを見届けてあげるのが、正しい役割なのです。

   ただ単に、毎月月末に個々の担当者の実績数字の進捗だけを見て、「もっとがんばれ」「あと少しだ」などとハッパをかけているだけの管理者では、その役をなしていないのです。

   管理者が担当者に代わって行動管理しつつ日々伴走するとなると、当然のことですが、管理者自身が個別目標を持って、担当者兼務するプレイイング・マネージャーでは、役を成さないことになります。

   ですから、まずは営業管理者を管理に専念させることが必要です。本連載の次回以降に、管理者がやるべき仕事については詳しく説明しますが、管理者は営業担当との兼務では十分な管理などとてもできないのです。

   もし管理者にも目標を持たせたいのなら、彼が管轄する営業チーム全体の目標を管理者の目標とするべきです。

   世の営業担当者の大半は自己管理ができていないという現実の中で、営業管理者に課された役割は非常に重要です。会社としての営業目標が達成できるか否かは、営業管理者の管理次第とも言えるのです。【つづく】(大関暁夫)

大関 暁夫(おおぜき・あけお)
株式会社スタジオ02 代表取締役 企業アナリスト
東北大学経済学部(企業戦略論専攻)卒。1984年、横浜銀行に入行。現場業務および現場指導のほか、出向による新聞記者経験を含めプレス、マーケティング畑を歴任。全国銀行協会出向時には対大蔵省(当時)、対自民党のフロントマンも務めた。中央林間支店長に従事した後、2006年に独立。銀行で培った都市銀行に打ち勝つ独自の営業理論を軸に、主に地域金融機関、上場企業、ベンチャー企業のマネジメント支援および現場指導を実践している。
メディアで数多くの執筆を担当。現在、J-CAST 会社ウォッチ、ITメディア、BLOGOS、AllAboutで、マネジメント記事を連載中。
1959年生まれ。
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