ヤマト、経営の重荷の小型荷物に見切り...中核の宅急便事業に経営資源集中へ 物流の「2024年問題」への危機感が決定打に
もっとも、他方で、ある業界関係者は「ヤマトがメール便からの撤退に追い込まれるのは、時間の問題だった」と指摘する。物流大手にとって、メール便などの小型荷物の配送は経営の重荷になっていたからだ。
ヤマト運輸のメール便の取扱量は年間約8億個、小型荷物は約4億個に達する。インターネットを介した通販や個人間売買の拡大で需要は旺盛なものの、配送料が安いため採算は低迷していたという。
そして、決定打になったのが「2024年問題」だ。
2027年4月以降、トラック運転手の時間外労働の上限規制は年960時間に強化される。ただでさえ人手不足の物流業界の逼迫感が、さらに深まるのは確実。物流大手が物流網の維持に向けて早急な対策を迫られる中、日本郵政とヤマトも大きな決断を迫られた。
ヤマトは協業を機に採算性の低い小型荷物から手を引く。そして、経営資源を中核の宅急便事業に集中する方針だ。
かたや、日本郵便はヤマト経由のメール便も配送することで、トラック1台当たりの積載率をあげて、収益の改善をはかる狙いがある。
最終的に、両者の思惑がうまくかみ合ったかっこうだ。
おりしも、「2024年問題」は物流業界に、1社単独では対応できないという強い危機感を植え付けた。
日本郵政は佐川急便との間でも、トラックの共同運送などに着手している。物流業界の恩讐を超えた協業は、今後も拡大する可能性がある。(ジャーナリスト 済田経夫)