2024年4月から施行されるトラックドライバーの時間外労働の規制強化である流通業界の「2024年問題」が深刻だ。運送業界では対策を進めているものの、全日本トラック協会が2024年6月2日に公表した「働き方改革モニタリング調査」の結果では、対策が進展していない。
2024年問題...時間外労働時間の上限が、年間960時間に
2024年問題とは、トラックドライバーについて、時間外労働時間は年間960時間に規制されるほか、国がルールとして定める年間の拘束時間が、3300時間に見直されるもの。これにより、実働できるトラックドライバーが減少することで、輸送量の減少が懸念されている。
同協会では、の時間外労働時間が年960時間超となるトラック運送事業者の割合をゼロ%とする目標を掲げ、進捗をモニタリングしている。今回の調査では、678の運送事業者から回答を得た。
2024年問題の最大の課題である時間外労働時間が年960時間を超えるドライバーの有無では、2022年10月時点で「いる」の割合は29.1%と、2021年10月時点の調査よりも2.0%増加している。
ただ、「いない」の割合が69.2%から68.4%へと0.8%減少にとどまっている。一方で、「わからない」が2.6%から1.0%へ1.6%減少、「無回答」が1.1%から1.5%へ0.4%増加していること。このことから、「いる」の増加とは、「わからない」→「いる」に変わった分と「無回答」の増加によるものと推測される。(グラフ1)
月60時間超の時間外労働で、時間外割増賃金率の引き上げ「適用している」9.7%
いずれにしても2021年調査よりも2022年調査で、時間外労働時間が年960時間を超えるドライバーが増加しており、対策が遅れていることが明らかになっている。
一方、時間外労働時間が年間720時間を超える一般労働者の有無では、「いる」の割合は2022年10月時点で11.4%と、2021年10月時点の調査より2.4%減少した。
「いない」の割合が82.9%から84.7%へと1.8%増加しており、「わからない」が1.8%から1.3%へと0.5%減少している。このことから、「いない」の増加と「わからない」→「いない」に変わった分が「いる」の減少に結び付いているものと推測される。ただ、「無回答」も1.5%から2.7%へ1.2%増加している点は気がかりだ。(グラフ2)
これにより、ドライバーとは違い、一般労働者については、時間外労働対策が徐々に進んでいることがうかがわれる。
さらに、月60時間超の時間外労働に対する時間外割増賃金率引き上げについては、「既に60時間超の残業に割増賃金率50%を適用している」が2021年10月時点の8.0%から1.7%増加して9.7%となった。
また、「対策を検討している」も53.4%から61.4%に増加。「準備していない」は18.8%から9.4%に減少しており、時間外割増賃金への対応が進んできていることがわかる。(グラフ3)
流通業界の2024年問題では、政府も対策に乗り出しており、有識者の検討会を設け、荷主側に対して、納入先での待機時間や納品回数を減少させるなど、計画的な改善を求めている。
荷物を受け取る側となる個人でも、配達時間を指定する、置き配を利用するなどにより、再配達を減らすことで、ドライバー(配達員)の負担を軽減ることになる。2024年問題が実化しないように、協力していく姿勢が必要だ。