「徹底的な節度」と「不完全さの魅力」
さて、自己啓発本には数字をタイトルに掲げたものが少なくない。なかでも、「7」という数字に着目している。「個人的なルールを定めるのに超自然的な理由を求める必要などない。ただ定めたルールがあなたに行動を促すことになれば、それで十分なのだ」という。
評者が個人的に共鳴したのは、「徹底的な節度」と「不完全さの魅力」という言葉だ。
前者は自己啓発本に出てくる、極端なやり方は通用しないということを指している。7日間で人生を変えることなどとうていできないが、「徹底的な節度」によって、物事を悪化させることなく、少しずつでも良くしていくことができる――そんな中庸の考え方だ。
また、後者は日本の「侘び寂び」に通じるもので、不完全さそのものが重要だという考え方だ。
本書で批判の対象となっているのは、100冊以上の自己啓発本であり、そのほとんどが邦訳されていることにも驚いた。著者は自説を展開するのに、多くの作家、心理学者、評論家から文献を引用している。
まさに、「広大で時には迷いそうになる自己啓発の世界を旅するときのロードマップ」として役に立つだろう。(渡辺淳悦)
「HELP! 『人生をなんとかしたい』あなたのための現実的な提案」
オリバー・バークマン著、下隆全訳
河出書房新社
1780円(税込)