なぜ「サントリー天然水」と「コカ・コーラ」が並んだ広告が? 先端技術で加速!サントリーの「ボトルtoボトル」水平リサイクルに迫る/サントリーHD・渡辺雄太さんに聞く

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「F to Pダイレクトリサイクル技術」は、CO2排出量のさらなる削減にも貢献

――さらに、サントリーGでは、リサイクル技術の革新にも挑戦されていて、「F to Pダイレクトリサイクル技術」というものも導入されています。ぜひ詳しく教えてください。

渡辺さん 通常のメカニカルリサイクルでは、回収したペットボトルを粉砕、洗浄、乾燥させた「フレーク(Flake)」という状態にします。その後、フレークを高温で溶融して、結晶化させて「ペレット」という形状の再生樹脂にします。それをさらにもう一度溶融して「プリフォーム(Preform)」という、ペットボトルの原型ができます。これを膨らませると、おなじみの「ペットボトル」になります。
F to Pダイレクトリサイクル技術
F to Pダイレクトリサイクル技術
渡辺さん これに対して、サントリーグループが協力会社さんとともにつくり上げた「F to Pダイレクトリサイクル技術」では、熱溶融を必要とするフレーク→ペレット→プリフォームの一部工程をスキップして、「フレーク」から直接、「プリフォーム」をつくる(Flake→Preform)技術です。熱溶融の工程の一部を省くことで、エネルギー効率も高まります。
さきほど、「ボトルtoボトル」水平リサイクルの場合、化石由来原料からペットボトルをつくる場合と比較して、約60%のCO2を削減できるとお伝えしましたが、F to P技術では、さらに10%のCO2削減効果があります。
この技術は2018年に開発・導入。現在、一部のペットボトルはこの技術でリサイクルしていますが、将来的にはこれまで以上に対応できるよう、生産体制などを整えていければと考えています。

――今後、ペットボトルの水平リサイクルの好循環をまわすために必要なことは、なんでしょうか。

渡辺さん ポイントは、分別、回収でしょうか。とはいえ、日本ではかねてからペットボトルの回収率は高く、みなさんもご家庭でもすでに分別されていると思います。でも、やってはいるけれど、その後どのように使われているかわからない、と感じていませんか。そこがわかると、もっとモチベーション高く取り組めるのではないかと思います。

――言われてみれば、そうですね。

渡辺さん ペットボトルの分別行動のいいところは、消費者のみなさんが取り組みやすいことだと思います。たとえば、CO2の削減は大事ですが、では個人で取り組めることは何かといえば、なかなかイメージがわきづらいかもしれませんね。
ただし、ペットボトルの分別行動の先には、環境負荷を低減する取り組みにつながり、意義があるということをお伝えしていくことは、ペットボトルを利用する私たちの責任だと考えています。また、こうした分別行動をきっかけに、サステナビリティ(持続可能性)への関心の入り口になるといいなと思っています。

――消費者のみなさんとは、どのようなコミュニケーションをされていますか。

渡辺さん 分別、回収されたペットボトルは、資源が循環される取り組みにつながっていることをウェブサイト、テレビCMなどの広告を通じて情報発信しています。また、昨年(2022年)から、新たなロゴマーク『ボトルは資源!サステナブルボトルへ』を、国内ペットボトルの全製品のラベルに入れています。
そのほか、「ボトルtoボトル」水平リサイクルの協定を締結した自治体の小学校への出張授業に、ショッピングモールのイベントスペースなどではペットボトルリサイクルの啓発プログラムに取り組んでいます。
ロゴマークの『ボトルは資源!サステナブルボトルへ』
ロゴマークの『ボトルは資源!サステナブルボトルへ』

――最後に、今後の展望はいかがでしょうか。

渡辺さん サントリーGでは、2030年までにペットボトルの「100%サステナブル化」を目指しています。これに関して、昨年の国内清涼飲料事業の実績では、「ボトルtoボトル」水平リサイクルや、植物由来素材の活用等で46%に到達しました。今年は50%超えを目指しています。いずれにしても、100%に近づけられるよう、活動を続けていきたいと思います。今回はあまり触れられませんでしたが、さらに将来を見据え、植物由来素材を100%活用するペットボトルの早期実用化も目指し、研究開発も進めています。

――ありがとうございました。

【プロフィール】
渡辺 雄太(わたなべ・ゆうた)

サントリーホールディングス株式会社
サステナビリティ経営推進本部 課長

2003年新卒でサントリー株式会社(現・サントリーホールディングス株式会社)に入社。酒類事業、グループ経営企画などを経て、現在サステナビリティ経営推進本部で、「容器・包装」のサステナビリティ戦略の立案・推進を担当する。

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