トルコの伝統的な菓子「バクラヴァ」の人気が高まっている。
きっかけになったのは2022年11月、東京・銀座の百貨店にトルコの老舗バクラヴァ専門店「ナーディル・ギュル」がオープンしたこと。
コンビニエンスストア大手のローソンがバクラヴァをイメージした菓子を期間限定で売り出したほか、各家庭でも作られるようになるなど、さまざまな動きが広がっている。
超有名店「ナーディル・ギュル」、松屋銀座に国外初出店 半年で14万個売れる
バクラヴァとは、薄いパイ生地を何十層にも重ね、層の間にピスタチオやくるみなどのナッツをたっぷりはさんで焼き上げたトルコの伝統菓子だ。
仕上げに甘いバターシロップをふんだんにかけるのが特色で、「世界一甘い菓子」との異名も取る。オスマン帝国時代から中東や欧州で食べられており、世界的にもよく知られたスイーツだ。
ナーディル・ギュルは1843年創業のバクラヴァ専門店で、「バクラヴァの王様」とも称される。イスタンブールの店舗には1日9000人が訪ねるという超有名店だ。
これまでは品質などを保つためイスタンブールの1店舗しか持たなかったが、昨秋、東京・銀座の松屋銀座に国外では初の店をオープン。一つひとつ手作りする伝統や職人技が日本で理解されると判断したためだという。
日本ではほとんど知られていなかったスイーツだが、トルコの有名店が店を開くと、旅行などで食べたことがある人たちを中心に注目が集まった。
そもそも松屋銀座がオープン前の2021年秋に行ったイベントでは、新型コロナウイルス禍が続く中でも、マスクをした100人以上の行列ができた。昨秋に正式にオープンすると人気はさらに高まり、半年で14万個も売れているという。
2023年の注目スイーツ クックパッドでも検索頻度が急上昇!
そんな動きに押されて、輸入食品を扱う店でもバクラヴァが販売される動きが目立つようになった。
さらに、ローソンは2023年の注目スイーツはバクラヴァだとして、これをイメージした新作スイーツ「バクラバ風くるみパイ」を3月末から約1か月間販売。甘いシロップがしみ、サクサクした食感が特に女性客を中心に人気だったという。
他方、レシピ検索サービスを展開するクックパッドによれば、バクラヴァの検索頻度はコロナ禍の20年から上昇傾向にあり、23年に入ってさらに急上昇しているという。
コロナ禍で海外に行けなくなるなか、「あまり知られていない国や地域の食に関心を高めたのではないか」という。同社の投稿レシピでは、パイシートや春巻きの皮でバクラヴァの生地を代用したものの人気が高いという。
百貨店や食品関係者の間では、「バクラヴァ人気は中東スイーツが注目される先駆けではないか」という声が強い。
すでに食べたことがある欧米のスイーツではなく、今まで知らなかったスイーツへの関心が高まっているとされ、今後の中東スイーツブームにつながる予感も広がっている。(ジャーナリスト 済田経夫)