中小企業こそ、データを活用した経営で生き残れ!

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   コロナ禍にもかかわらず過去最高益を実現した会社の社長が、その秘訣を本書「データを使って利益を最大化する 超効率経営」(あさ出版)に公開している。

   中小企業におけるデータとデジタルツールの活用方法を詳しく解説したものだ。中小企業の経営者に勧めたい1冊だ。

「データを使って利益を最大化する 超効率経営」(小山昇著)あさ出版

   著者の小山昇さんは、株式会社武蔵野代表取締役社長。同社は、ダスキンのフランチャイズによる「環境衛生事業」と「経営サポート事業」が2つの柱だ。現在、750社超の会員企業を指導し、そのうち450社が過去最高益という実績を持つ。豊富な事例を紹介しているので、説得力がある。

「5のしくみで、10の売上を上げる会社」に変わった

   小山さんが説く、「データドリブン経営」とは、収集・蓄積された客観的なデータを分析し、その結果にもとづいて企業の方針を決める経営のこと。社長の直感による判断を避け、データを重視し、マーケットの変化を読む。

   データを業務改善に役立てれば、使った労力以上の結果を得ることも可能だ。同社では、データによる業務の超効率化が進み、「5のしくみで、10の売上を上げる会社」に変わったという。

   その例として、ダスキンライフケア事業部の業務改善を挙げている。10年間連続赤字だったが、2019年度に初めて200万円の黒字に。2020年度はコロナ禍の影響で減少傾向を見せたものの500万円の利益、2021年度は驚異的に回復し、過去最高となる6100万円の利益をだした。

   その要因は、「Googleルッカ―スタジオ」を活用した「スピード対応」と「問い合わせ後の2次対応」にある。

   Googleルッカ―スタジオとは、Googleが提供する無料のツール。プログラミングを行うことなく、さまざまなデータがグラフや表に自動的に変換される。データの自動更新や共有も可能だ。比較関数が実装されているため、期間別の比較データ(前月比、昨年対比など)も簡単に抽出が可能だ。

   導入した3つの理由はこうだ。

1 作業の手間が省ける
2 「新しい事実」がわかる
3 数値がリアルタイムで可視化される

   たとえば、同社の全社管理本部(総務部門)では、ルッカースタジオ「総務問い合わせ」をつくり、「どのような問い合わせが多いか」1419件を可視化した。その結果、総務への直接の問い合わせが減り、1カ月で13時間の業務削減につながったという。

   また、解約の理由を分析したところ、「モップ単体利用は解約が多い」ことなどがわかった。そのため、複数契約のコミッション額を多くすることで複数契約が増えたという。

「成績の良いセールスパーソンほど、残業時間が少ない」

   ルッカースタジオを導入したのは、2019年2月。最初に取り組んだのは、タイムカード(残業時間)の可視化だ。個人別営業成績と関連づけたところ、意外な事実がわかった。「成績の良いセールスパーソンほど、残業時間が少ない」ことだった。

   残業が多いのは、勤務時間中に全力を出していない証拠だという。

   そこで小山さんは、「残業時間が減っても可処分所得は減らないしくみ」を導入した。売上が下がらずに残業が減ったら、社員賞与やパート賞与を増やすことにした。その結果、月平均の残業時間が76時間超から9.84時間と劇的に減った。

   以前は新卒採用者の5割が1年で退職していたが、21年は23人が入社し、退職者はゼロだそうだ。ブラック企業から転換を図ることができた、と自負している。

   ユニークなのは、上司と部下の飲み会の回数までデータ管理していることだ。新型コロナウイルスの終息とともに、飲み会・ランチ会などの懇親会を人材戦略の一環として位置づけ、実施状況や参加状況をデータで管理している。

   パート・アルバイトを含めた部門の飲み会や上司と部下のサシ飲みも公式行事として、会社が費用を負担している。ただし、サシ飲みについては、同一人物と2カ月連続は不可などのルールがある。上司は脇役とされ、部下の質問に答える場と位置付けられている。

   社員に支給する懇親会の費用は年間2500万円というから驚く。「飲みニケーション」に対して否定的な風潮が強くなってきたが、同社では大切なコミュニケーションの場として重要視されている。

iPadの支給がエポックに 「竹やりから空中戦へ」業務スピードが改善

   業務に使うルッカースタジオは、現場の社員、パート、アルバイトが自分たちでつくるのが基本だ。たくさんつくり、改善する。改善の数も賞与の評価に結び付けている。

   同社のデジタル化の変遷を詳しく紹介した記述が興味深い。小山さんは1980年代から、積極的にデジタル化を進めてきたことがわかる。なかでも、2014年に全社員に、翌年からパート、アルバイトも含めて全員にタブレット端末iPadを支給したのがエポックとなったようだ。

   伝票処理、精算業務、棚卸し、電子決済、スケジュール管理、販促活動などをiPadで行っている。「竹やりから空中戦へ」と業務スピード改善を比喩している。

   最終章は、同社がかかわった事例編だ。

   ルッカースタジオで患者動態を管理。再来院を呼びかけ、患者数が20%増えた整形外科クリニック(栃木県)、ルッカースタジオで学科試験の設問傾向を分析し、合格率が向上した自動車学校(新潟県)などの例が実名で紹介されている。

   「中小企業にはビッグデータは不要。実績報告など5つの情報さえ漏らさなければ、業務効率化は可能」という小山さんの主張を裏付けている。

(渡辺淳悦)

「データを使って利益を最大化する 超効率経営」
小山昇著
あさ出版
1760円(税込)

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