ストレスを生まない「コミュニケーション」、たった1つのヒントとは【尾藤克之のオススメ】

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   「あの人、困ってるかも?」と、せっかく気がついたのに、「迷惑だったらどうしよう...」と躊躇したり、「たぶん大丈夫だろう」「余計なひと言かもしれない」「スタンドプレーと思われそうだ」...と自分に言い訳をしていませんか?

『気づかいの壁』(川原礼子著)ダイヤモンド社

あいづちの「はい」と、肯定の「はい」がある

   社内ではコミュニケーションロスにより、ストレスを生み出すことがある。ちょっとした返事だけでも、気づかいの違いが表れると、著者の川原さんは指摘する。

「たとえば、ある業務を進める中で、確認のために相手に質問したとしましょう。『変更があるときは、前日までにご連絡すればいいんですね?』→『はい』。いかがでしょう。これだけだと、本当に前日まででいいのか、何に対しての『はい』なのかが不明瞭で不安になります。『前日でいいんですよね?』と念を押して再確認したくなります」(川原さん)
「逆の立場になったとして、『自分は返事をしているのに聞き返された』という思いをしたことはないでしょうか。その場合も、おそらく返事の仕方が悪かったのでしょう。じつは、返事のときの『はい』には、あいづちの『はい』と、肯定の『はい』があります。人は、相手の話を聞いていることを示すために、あいづちを打ちます」(同)

   ところが、肯定の「はい」か、あいづちの「はい」としか聞こえない場合、お互いに誤解が生まれることがある。返事の仕方も気をつけないといけないということだ。

「肯定の『はい』として伝えるためには、『センテンス(文章)』で答えることで、相手に確かなものとして伝わります。『はい、そうです』『はい、前日までにご連絡ください』とまで言うようにすれば、相手も聞き返す必要はなくなります」(川原さん)

   「接尾語」の使い方以外にも「はい」には、いろんな意味が存在する。「拝」は、敬礼することの意味になり、気分が高揚している「ハイ」もある。言葉は伝わらなければ意味がない。誤解を減らすための作業が必要になることは言うまでもない。

自分でよくわかっていない言葉は避けるべき

   筆者である私はコンサルティング会社出身だが、社内では専門用語やカタカナ英語が飛び交っていた。このような具合である。

リーダー「本日のアジェンダはレジュメを見てほしい。当初はタイトなスケジュールだったことからリスケになりペンディングの状態だったが、その後どうなっている?」
社員A「レジュメもスケジュールもビジーです。今月中にアグリーをとりつけましょう。メンバーのコンセンサスをとる必要がありますが、各レイヤーの認識はどうですか?」
社員B「マネジャークラスに意識のギャップが見られます。オーソライズしたうえで、ラインマネージャーからエスカレーションしてもらうスキームを確立したいと思います」

   詳細な解説は控えるが、自分自身もよくわかっていないような言葉は避けるべきだろう。しかし、可能なら情報収集して理解しておいたほうがいい。わからなくてもわかったフリをして話を進めると、あとになって「この間、了解したはずだよね!」などと言われてトラブルの種になってしまう。

   かつて筆者が永田町に出入りしている頃、次のようなことがあった。電話口では「政策(せいさく)」と聞こえる。「施策(せさく)」とも聞こえる。「明日は禁足(禁則?)」「その件は知悉(地質?)」「いわんや(言わんや?)」。数え切れない失敗をして、ようやく言葉を理解していったものだ。

   本書では、誰でもできる気づかいなのに、絶妙にできていないリアルな実例を多数、紹介されている。謙虚な人。内向的な人。繊細な人。思いやる人......。そんな「気づかいの素質」を持つあなたが一歩を踏み出す戦略書といえる。(尾藤克之)

尾藤 克之(びとう・かつゆき)
尾藤 克之(びとう・かつゆき)
コラムニスト、著述家、明治大学客員研究員。
議員秘書、コンサル、IT系上場企業等の役員を経て、現在は障害者支援団体の「アスカ王国」を運営。複数のニュースサイトに投稿。著書は『最後まで読みたくなる最強の文章術』(ソシム)など19冊。アメーバブログ「コラム秘伝のタレ」も連載中。
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