自分でよくわかっていない言葉は避けるべき
筆者である私はコンサルティング会社出身だが、社内では専門用語やカタカナ英語が飛び交っていた。このような具合である。
リーダー「本日のアジェンダはレジュメを見てほしい。当初はタイトなスケジュールだったことからリスケになりペンディングの状態だったが、その後どうなっている?」
社員A「レジュメもスケジュールもビジーです。今月中にアグリーをとりつけましょう。メンバーのコンセンサスをとる必要がありますが、各レイヤーの認識はどうですか?」
社員B「マネジャークラスに意識のギャップが見られます。オーソライズしたうえで、ラインマネージャーからエスカレーションしてもらうスキームを確立したいと思います」
詳細な解説は控えるが、自分自身もよくわかっていないような言葉は避けるべきだろう。しかし、可能なら情報収集して理解しておいたほうがいい。わからなくてもわかったフリをして話を進めると、あとになって「この間、了解したはずだよね!」などと言われてトラブルの種になってしまう。
かつて筆者が永田町に出入りしている頃、次のようなことがあった。電話口では「政策(せいさく)」と聞こえる。「施策(せさく)」とも聞こえる。「明日は禁足(禁則?)」「その件は知悉(地質?)」「いわんや(言わんや?)」。数え切れない失敗をして、ようやく言葉を理解していったものだ。
本書では、誰でもできる気づかいなのに、絶妙にできていないリアルな実例を多数、紹介されている。謙虚な人。内向的な人。繊細な人。思いやる人......。そんな「気づかいの素質」を持つあなたが一歩を踏み出す戦略書といえる。(尾藤克之)