本業を持ちながら複数の企業で活動する「副業人材」。彼らを受け入れることは会社にとって、どんないい影響を与えているのだろうか?
パーソルキャリア(東京都千代田区)が運営する、プロフェッショナル人材の活用支援サービス「HiPro(ハイプロ)」が2023年6月9日に発表した「副業人材の活用が企業に与える影響」についての調査によると、副業人材を受け入れている企業は2021年度から2022年度は4ポイントアップして20.8%になることがわかった。
また、副業人材と一緒に働くことは、「社員の生産性向上」や「社員のスキルアップ」、「モチベーションの向上」など良い影響を与えているようだ。
副業人材の受け入れ増加した企業は62.8%
この調査は、2023年5月13日から15日までの間、自社の採用業務や人材獲得業務に携わっている管理職の1873人。および、職場で副業人材を受け入れていて、採用や人材獲得業務に携わっている管理職400人を対象に、インターネットアンケートで調べた。
今回の調査の背景として、「HiPro」が多くの企業と副業人材を含む人材とのマッチングに携わるなかで、企業から「副業人材を受け入れることが、自社社員のスキルアップにつながった」という声が多く聞かれたという。このことから、副業人材の活用は「人への投資」を推進する目的の1つとなるかどうかについて調べた。
はじめに、2022年度に副業人材の活用を開始した企業担当者(n=400)の割合を調査した。すると、21年度は16.8%だった副業人材を活用する企業が、22年度には20.8%に上昇し、4ポイントアップしていることがわかった。
(HIProの作成)
また、企業における副業人材の人数は「大幅に増加」が「14.8%」、「やや増加」が「48.0%」となり合わせて「62.8%」が増加を示していることが明らかになった。
2022年度に副業人材受け入れを始めた企業 目的は「スキル・専門性の獲得」「プロジェクト推進」
(HIProの作成)
続いて、「副業人材の成果」について聞いた。「期待以上」は「14.5%」、「どちらかというと期待以上」が「43.3%」、「期待通り」は「36.8%」、「どちらかというと期待以下」は「5.3%」、「期待以下」は「0.3%」となった。
つまり、「期待以上」と「どちらかというと期待以上」をあわせた「58.8%」の企業では副業人材を受け入れた施策について満足しているようだ。
つぎに、「副業人材の活用が会社にいい影響を与えているか」の設問では、「いい影響を与えている」が「29.3%」、「どちらかというといい影響を与えている」が「66.0%」、「どちらかというと悪い影響を与えている」が「4.5%」、「悪い影響を与えている」が「0.3%」となり、「良い影響を与えている」が多数を占めた。
具体的な理由を聞いてみると、「社員の生産性向上に繋がった」(46.5%)、「既存ビジネスの課題解決が進んだ」(35.5%)、「社員のスキルアップに繋がった」(34.3%)、「社員のモチベーションアップに繋がった」(30.3%)、「新規ビジネスの創出に繋がった」(27.0%)などが上がっている(n=400)。
さらに、副業人材の活用を行っている管理職(n=400)に理由を聞いたところ、全体の1位は「人手不足を解消するため(労働力を補いたい)」が「46.5%」、「スキル・専門性を得ることができるため」が「44.8%」、「期間や頻度を柔軟に調整しやすいため」が「40.5%」だった。
一方で、2022年4月以降に副業人材を受け入れ始めた企業(n=85)に理由を尋ねると、「スキル・専門性を得ることができるため」が「50.6%」、「プロジェクトの推進スピードを上げることができるため」は「48.2%」、「期間や頻度を柔軟に調整しやすいため」は「42.4%」という結果が得られた。
(HIProの作成)
最後に、副業人材活用を継続したいか聞くと、「継続したい」が「36.3%」、「どちらかというと継続したい」が「57.5%」、「どちらかというと継続したくない」が「5.3%」、「継続したくない」が「1.0%」となった。
調査に対して「HiPro」編集長の鏑木陽二朗氏は、以下のように総括する。
「今回の調査結果を見ると、副業人材の活用は、企業の課題解決や人材不足の解消に加え、自社社員の『生産性向上』や『スキルアップ』といった副次的な良い影響があると明らかになりました。
これは、自社社員が副業人材と共にはたらくことで、新たな知見やノウハウを習得する、つまりアップスキリング(※スキルや専門知識を身につけ、すでに持つ能力を高めること)の一環になると言えるでしょう。こうしたことから、副業人材の活用は「人への投資」の推進理由である「個の能力発揮」を実現する1つの手段として効果的であると推測されます。
また、副業人材がもたらす自社社員への効果や成果が明らかになっていくことで、人手不足の解消の手段としてだけでなく、自社に新たな価値をもたらす手段として、より副業人材の活用が広がる日も近いでしょう」