企業の「ChatGPT」利用率に大差、日本7%、米国51%! 日本経営層の関心、米国の半分以下...利用も事務ばかり、米国はクリエイティブなのに

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   対話型生成AI(人工知能)「ChatGPT」がニュースにならない日はないが、国際的にみて日米企業での利用はどの程度進んでいるのだろうか。

   ICT市場調査コンサルティングの「MM総研」(東京都港区)が2023年6月12日、「ChatGPT」の発祥地である米国企業と比較した「日米企業におけるChatGPT利用動向調査(2023年5月末時点)」を発表した。

   それによると、日本の「ChatGPT」利用率は7%なのに対し、米国は51%と大差がついた。なぜ日本はこれほど遅れている?

  • 日本とアメリカ(写真はイメージ)
    日本とアメリカ(写真はイメージ)
  • 日本とアメリカ(写真はイメージ)

画像系など各分野のAI利用率でも、日米に大差が

   MM総研の調査は、日本と米国の企業・団体に所属する従業員1万3814人(日本1万3412人、米国402人)が対象だ。米国を比較の対象に選んだのは、「ChatGPT」を開発した「OpenAI」(オープンエーアイ)社が米国に本拠を置くからだ。

   まず、ビジネスにおけるChatGPTの利用率を聞くと、日本では7%とまだ大きく広がっておらず、新しいテクノロジーなどを積極採用する初期採用層が利用している状態にとどまる。また、「知らない」が46%と半数近くを占め、知っていても「利用していない」が42%となった【図表1】。

(図表1)日米のChatGPTの利用率比較(MM総研の調査)
(図表1)日米のChatGPTの利用率比較(MM総研の調査)

   一方、米国では利用率が51%と、日本を44ポイントも上回る。すでに多くの企業で利用されており、「知らない」も9%にとどまる【再び図表1】。

   この傾向は生成AI全般に共通する特徴で、「ChatGPT」をはじめとする言語系AIだけでなく、「Stable Diffusion」や「DALL・E」といった画像系など各分野のAIでも利用率に大差がついた【図表2】。

(図表2)日米の各生成AIの利用率比較(MM総研の調査)
(図表2)日米の各生成AIの利用率比較(MM総研の調査)

   これほど大差が出た要因の1つに、経営層の関心度合いの違いがあげられる。

   米国では6割以上の経営層が「ChatGPT」に強い関心を持っているのに、日本の経営層は米国の半分以下だった。また、有料のアカウントやAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を整備するなど企業のAI利用環境の進み具合でも日米で大差が開いた。

   次に、日本で「ChatGPT」利用率の高い属性を見ると、従業員が多い大企業であること、職階では経営層や管理職と上位であることがあげられる。業種ではエネルギーや水といったインフラ系、学術研究、情報通信などが平均値(7%)よりも2~3ポイント高い【図表3】。

(図表3)日本の属性ごとのChatGPTの利用率比較(平均値7%)(MM総研の調査)
(図表3)日本の属性ごとのChatGPTの利用率比較(平均値7%)(MM総研の調査)

   一方、卸・小売業、不動産業、そして自治体や中央官庁などの行政は平均値より低い。部門では人事が24%と平均よりも突出して高い【再び図表3】。

   こうした結果から、「ChaGPT」を利用する目的は、日米ともに「既存業務の効率化」が大半を占め、「新規事業での活用」や「教育・研修の高度化」は次なる目標として位置づけている。

日本は事務作業中心、米国はクリエイティブ作業にも活用

   また、「ChatGPT」利用者に具体的な用途を聞くと、日本では利用率の高い順に「文章生成」「要約」「校正・構造化」「情報検索」となった【図表4】。

(図表4)日米のChatGPTの利用用途の比較(MM総研の調査)
(図表4)日米のChatGPTの利用用途の比較(MM総研の調査)

   具体的には「メールなどの定型文を作成する」「議事メモを要約する」「膨大な情報があるときの整理」など、業種や部門とは関係なく事務作業を効率化する用途が目立った。利用率の高い人事部門では「面接の質問案」「求人票の言い回し」などアイディアの生成にも利用されている。

   先行する米国では、日本よりも用途が幅広い。「アイディア生成」などクリエイティブな作業や、「ChatGPT」の進化型「GPT4」を活用した「自然言語でのコーディング」の割合が日本の3倍近く高かった【再び図表4】。

   生成された内容の満足度を聞くと、日米ともに用途ごとに若干の温度差はあるが、10段階評価でおおむね6~7点と、高く評価している。さらに、9割以上の利用者が「今後も利用継続したい」と答えた。

パソコンで作業をする女性(写真はイメージ)
パソコンで作業をする女性(写真はイメージ)

   さて、「ChatGPT」の利用を拡大するための課題はなんだろうか。

   日米ともにトップは「回答の精度」で5割弱を占めた【図表5】。満足度や利用継続意向が高いため、より高精度な回答を求めている。「ChatGPT」では、指示の出し方(プロンプト)で結果が大きく左右される。現状は、プロンプトをSNS、まとめサイトなどを通じて個人間や特定のコミュニティーで共有しているケースが多い。

(図表5)日米のChatGPTの利用を拡大するうえでの課題(MM総研の調査)
(図表5)日米のChatGPTの利用を拡大するうえでの課題(MM総研の調査)

   日本でも、ソフトバンクやパナソニックなど全社での利用を進め、自社での使いやすさを見つける先進企業も出てきた。今後はより広いハブを構築し、業界や業務ごとにより良いプロンプトや活用事例を整理する必要が出てきそうだ。

スタートダッシュで出遅れた日本、政府の「AI戦略」に期待

ChatGPTをどう活用する?(写真はイメージ)
ChatGPTをどう活用する?(写真はイメージ)

   調査をまとめたMM総研ではこうコメントしている。

「『ChatGPT』を試すスタートダッシュでは、日米間で差が出てしまった格好だ。足元では日本企業の『ChatGPT』に対する関心も高い。
政府は『AI戦略会議』での取りまとめや、G7と共同で議論する『広島AIプロセス』でルール整備を進め、『新しい資本主義』の中では開発と利用を後押しするとしている。いずれも具体策はこれからとなるが、市場の今後を左右する大きな要因となる」

   調査は2023年5月24日~31日、日本と米国の企業・団体に所属する従業員1万3814人(日本1万3412人、米国402人)にWebアンケートを行なった。利用率などの集計では、1日の業務時間のうち25%以上をデスクワークに利用する従業員を対象とした。(福田和郎)

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