FRBのタカ派ポーズを、半信半疑で受け止めた市場
FRBがドットチャートを高く設定し、追加利上げ2回を示唆したのは、「市場に前のめりになるなよ」とタカ派を演じえみせたのでは、と見るのは、第一生命経済研究所主席エコノミストの藤代宏一氏だ。
藤代氏はリポート「経済の舞台裏:ドットチャートは『疑寄り』の半信半疑で眺める必要 確信犯的な『外し』」(6月15日付)のなかで、FOMC参加メンバーのドットチャートのグラフを示しながら、こう指摘した【図表1】。
「利上げが最終局面に差しかかっているとの現状認識が広く共有される中、Fed(連邦準備制度)は、金融市場参加者が前のめり気味に利上げ停止を織り込まないよう、ドットチャートを上方改定することでタカ派的な姿勢を演じた。FOMCを通過し、FF金利先物は7月の利上げ(0.25%)を約6割の確率で織り込んだ」
タカ派的なポーズは一定の効果があったわけだ。しかし、と藤代氏は続ける。
「タカ派的なドットチャートの形状は多くの市場関係者を驚かせたが、市場参加者がそれを真に受け止めたかは別問題であり、実勢としては『疑寄り』の半信半疑だろう。FF金利先物は相変わらず12月FOMCにおける『利下げ』を約3割の確率で織り込み、2024年1月FOMCまでに利下げが実施される確率を75%程度とみている。追加利上げはせいぜい1回で、その後は比較的早期に利下げに転じるという市場参加者の共通認識に大きな変化はない」
そして、今後の展開を藤代氏はこう結んでいる。
「パウエル議長はタカ派的な発言をしたが、一方で『7月の決定は全てのデータや状況の変化を見て下す』、『政策金利は十分抑制的な水準に近づいた』などと利上げ見送りが有力な選択肢であることも示唆しており、バランスを取っていた。結果的に、ドットチャートが示した政策金利水準(5.75%)には到達しない可能性が濃厚であると筆者(=藤代氏)は判断している」