デジタル人材の育成「本人に任せている」55.2% 「育成していない」33.8%
DXに取り組むにあたっては、知識やスキルも欠かせない。では、社内の育成体制はどうなのだろうか。「社内で、デジタルスキルや知識をどのように育成していますか」と聞いたところ、「個人にまかせている」が55.2%で最も多く、次に多かったのは「育成していない」で33.8%となった。
一方で、「社内で勉強会を開催」(15.1%)、「導入サービス会社が勉強会を開催」(11.4%)といった研修会などでの勉強の機会を設定している企業は少数派のようだ。
これについて同社は、
「従業員がデジタルスキルや知識を獲得できるよう積極的に機会を提供している会社は多くなく、また、DXを推進するうえで重要な『デジタル人材』の育成が個人の努力に依存していることがわかります。 会社として積極的にデジタル人材の育成をしていないことが、同時に『DXに取り組む必要性』を感じる機会の損失につながっている可能性も考えられます」
とみている。
ここまで社内のDXについて見てきたが、ではDXの導入によって顧客の反応はどうなのか。今回の調査に寄せられたフリーコメントをみると、
・データベースで全ての資料をリアルタイムに共有しているので喜ばれている。 ・迅速な対応が出来るようになり、喜ばれている。 ・見やすい帳票でわかりやすくて良いと言っていただいている。 ・物件オーナーは年配の人が多いのでネット導入には抵抗を感じる人が多かった。 ・高齢者からは対面を求められる。 ・高齢者も多いため、消極的。
といった意見もあがっている。物件オーナーが高齢者の場合には、導入に「抵抗感」を感じられるといった声もあるようだ。
今後のDX化への意向はどうか。取り扱い業務に「賃貸管理・建物管理業務を行なっている」と回答した人を対象に、「今後DX化、デジタル化できると良い管理業務を教えてください」と質問した。
それによると、「手作業による書類管理と郵送業務」が52.3%、「契約書の管理」が40.3%、「支払い・請求業務」が32.9%、「管理業務におけるヒューマンエラー」が32.2%、「電話や来客による問い合わせ対応」が31.9%という結果になった。やはり、書類の作成や管理業務において、DX化やデジタル化のニーズが高いようだ。
最後に、新たなDXサービスの導入を検討している人に、関心のあるサービスについても聞いている。その結果、1位は「電子契約システム」(48.6%)、2位は「IT重税システム」(38.8%)、3位は「内見予約システム」(23.2%)、4位は「賃貸管理(不動産基幹ソフト)システム」(22.1%)、5位は「CRM(顧客管理)システム」(15.6%)と続いた。
今回の調査を受けて、LIFULL HOME'S総研チーフアナリストの中山登志朗氏は、以下のように分析している。
「ITシステムの導入によってウェブ上で可能になる接客、チャットでの会話、電子契約や管理に至るまで業務の効率を高めることができる不動産DXですが、不動産は高額であるが故に現在でも情報の非対称性や情報の限定流布が日常的に発生しており、重要情報は紙ベースで、もしくは直接口頭でというケースが少なくありません。したがって業務効率向上やコスト削減には関心があっても、DXの導入によって情報が幅広く公開されてしまってはビジネスしにくいと考える関係者がいるのも事実です。 それでも不動産DXはこれから不可逆的に導入が進み、ITシステムを活用した効率的なビジネスソリューションが当たり前の不動産業界に変わっていくことでしょう」