ネット上の誹謗中傷 女性よりも男性、年齢が低い人ほど多い傾向 被害受けやすい属性、行動、投稿内容とは?(鷲尾香一)

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   ネット上の誹謗中傷に対して、政府はさまざまな規制や防止策を進めているが、いまだに誹謗中傷はなくならない。

   国際大学の研究プロジェクト「InnovationNippon」は2023年4月28日、「わが国における誹謗中傷の実態調査」「ジャーナリストへの誹謗中傷の実態」を発表した。

   今回はこの調査から一般の人とジャーナリストに対する誹謗中傷の状況を2回に分けて取り上げる。まずは、一般の人に対する誹謗中傷の状況からみていこう。

誹謗中傷の経験が多かったサービスはTwitter

   「わが国における誹謗中傷の実態調査」はアンケート調査によるもので、5226名から回答を得た。なお、この調査では誹謗中傷を以下の9つに定義した。

(1)脅迫・恐喝に当たるような悪口
(2)侮辱的・攻撃的な言葉を含む悪口
(3)容姿や人格を否定する悪口
(4)親族、友人、所属する組織に対する攻撃的な言動・悪口
(5)性別・人種・宗教・障碍などに関する差別的な悪口
(6)不幸が降りかかることを願う、呪うような表現
(7)社会的グループから排除するような表現
(8)嘘の情報を使った悪口
(9)性的な表現や画像の要求、画像の送信(セクハラ)

   そのうえで、Twitter、Instagram、Facebook、TikTok、YouTube、ネットニュースのコメント欄のいずれかについて、過去1年以内に利用した人が誹謗中傷を経験した割合は4.7%だった。誹謗中傷の内容では「侮辱・攻撃」が2.7%と最多だった。

   どのサービスで誹謗中傷を経験したかでは、Twitter、Instagram、Facebook、TikTok、YouTube、ネットニュースのコメント欄の中で、Twitterが4.2%と突出して高かった。(グラフ1)

   誹謗中傷の経験を性別、年代別に分類すると、性別では女性よりも男性が経験している割合が高い。また、年代別では、年齢が低い人ほど誹謗中傷経験率が高い傾向がみられた。

   最も高い10代男性は10.6%だったのに対して、最も低い60代女性は1.0%となっている。その背景について、「若い人ほどサービスを活発に利用していることがあると考えられる」としている。(グラフ2)

誹謗中傷の内容は「侮辱・攻撃」が男女とも最多 相手は「見ず知らずの人」66.8%

   経験した誹謗中傷の内容では、男性では「侮辱・攻撃」が3.5%と最も多く、次いで、「グループからの排除」「容姿・人格の否定」「脅迫・恐喝」「差別」がほぼ同率だった。一方、女性も「侮辱・攻撃」が1.8%と最も多かったが、「セクハラ」は男性の2倍以上となった。(グラフ3)

   誹謗中傷を誰から受けたのかでは、「見ず知らずの人」が66.8%と圧倒的に高い。次いで「ネットを通じて知り合ったが会ったことがない人」が20.0%となっており、身近でない相手からの誹謗中傷が多い現状が浮かび上がっている。一方で、「友人・恋人」からも9.9%にのぼっている。(グラフ4)

   誹謗中傷に対して取った対処は、「ブロック機能によって投稿者をブロックした(すぐにブロック解除した場合も含む)」が40.8%、「ミュートや非表示機能によって投稿者の投稿が表示されないようにした」が23.1%と多かった。

   一方で、「利用サービスの通報・報告機能を用いて通報した」は9.2%しかおらず、通報や報告機能があまり使われていない現状が浮かび上がっている。

   調査の結果、誹謗中傷を受けやすい属性と行動、投稿内容は、

「交流相手が多く、頻繁に利用しており、自撮りの投稿、恋人・パートナーとの仲良しな様子の投稿、政治の話題で、ネット上の見ず知らずの人と交流している、年齢が若く、ネット歴が短い、大卒者以上の学歴でプライバシー設定をしっかりした人」

と分析している。

   プライバシー設定については、「誹謗中傷を受けたからプライバシー設定を強化したという逆因果」が考えられるとており、本名を出し、誹謗中傷を受けないように気を付けている人は攻撃を受けにくいとしている。

   次回、ジャーナリストに対する誹謗中傷の状況を取り上げる。【第2回につづく】

   <ネット上の誹謗中傷 ジャーナリストの場合、男性よりも女性が多い傾向 話題の出来事の議論から「攻撃」に(鷲尾香一)>に続きます。

鷲尾香一(わしお・きょういち)
鷲尾香一(わしお・こういち)
経済ジャーナリスト
元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで、さまざまな分野で取材。執筆活動を行っている。
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