「偏差値を上げたい」「点数を上げたい」「とにかく合格したい」......。そんな想いに「120%」応え、ストレートにその方法を伝授する勉強本があります。さらには、人間が持つ知性の可能性を見つめ、人生を豊かにし、楽しく情熱にあふれたものにアップグレードするコツが身につきます。今回は、数ある「インプット本」の決定版を目指した一冊を紹介します。
『何歳からでも結果が出る 本当の勉強法』(望月俊孝 著)すばる舎
「完璧主義」の考え方が好ましくない理由
著者の望月さんは、「勉強の成果を加速させたいのならば、そして学習する目的を達成したいのならば、頭のなかから今後一切消し去ってほしい言葉がある」と言っています。
「この『漢字2文字』に気づくまでに私は、数千万円近いお金と、20年の歳月を失いました。子どものころから勉強は好きでした。『真面目でいい子』と言われていました。30歳までの勉強では、いい思い出がありませんでした。スポーツ推薦で入った高校では部活に行き詰まり、学習意欲も失い、一時期は学校をやめることも考えました」(望月さん)
「一念発起した大学入試でも、目指した大学には浪人しても不合格、大学では弁護士を目指すも、1年生のわずか数か月で挫折します。入社した自動車販売会社で、配属研修の座学ではトップクラスでしたが、営業成績は新人28人のなかで27位でした。転職した研修会社でも、営業成績がまったく振るわず半年で閑職に追いやられます」(同)
望月さんの、キャリアは決して順風満帆ではありませんでした。さらに、バブル崩壊で約4000万円の借金を負ってしまいます。
「転職した能力開発会社では主力講師として大手資格学校や上場企業で講師をするも、いざ独立するとまったく商売にならずあらたな借金を負います。勉強でしくじるたびに、さらに自分を追い詰めていました。『これだけ一生懸命学習しているのに、どうして報われないのだろう』。何も身についていない自分がイヤになりました」(望月さん)
「そのどん底で、自分のなかにずっとあった言葉に気がつきました。それが漢字2文字。『完璧』です。『自分は完璧でないといけない』『完璧でないものは、みんなダメ』『完璧でないものに価値はない』『完璧でないものは、発表や提供をしてはいけない』。そんな完璧主義の犠牲になっていたのです」(同)
そうです、この記事のタイトルにした「なぞかけ」の答えは、「完璧」です。完璧には「欠点がなく完全なこと」という意味があります。反対の言葉としては、不全(機能が不十分で完全でないこと)、不備(十分でないこと)などが当てはまります。仕事は「不十分」でも構わないのです。
ムダな勉強は、人生の時間のムダである
400年続く「究極の勉強法」があります。その究極の勉強法とは「守破離」です。「守破離」は、茶人・千利休の歌「規矩(きく)作法 守り尽くして破るとも 離るるとても本を忘るな」をもとにしているといわれています。茶道、武道、伝統芸能などの世界で、師弟関係、学びの姿勢を示す重要な方法論として知られます。
「守」は、師についてその流儀を習い、その流儀を守って励むこと。「破」は、師の流儀を極めた後に他流を研究すること。「離」は、自己の研究を集大成し、独自の境地を開いて一流派を編み出すことです。基本を習得し、他の方法やいろいろなパターンを試すことで、最後に「自分流」を確立します。
多くの人はステップを踏まないで学ぼうとしています。自己流ではたどり着けない境地といえます。このときにやってしまうのが、本書のテーマでもある「完璧主義」です。実行が最も大切ですが、完璧な計画やマイルストーンを描くことに腐心してしまうのです。そして、「完璧」な計画を描くことに疲れ切ってしまい、行動に移せなくなります。
試行錯誤をし、自己流のスタイルを確立したつもりになっていても、基本がなっていないので、上達もしないし成果もあがりません。それは時間のムダだったのです。
本書は、受験生など勉強をしている人に向けて書かれていますが、私はキャリアアップに勤しむビジネスパーソンにこそ読んでもらいたいと考えています。勉強の成果は他人が評価をするものです。その結果が、次のステージへつながります。人間が持つ知性の可能性を見つめ、人生を豊かにする勉強法を知りたい方におススメします。(尾藤克之)