「ヘンリー王子をずたずたにしてやる!」双方弁護士の「キャラ立ち」がすごすぎる?!
エドワード7世以来とされる、ロイヤルファミリーをめぐる法廷劇。世界中の注目を集める「戦い」の主役は、ヘンリー王子だけではありません。弁護側と被告側、双方の弁護団を率いる辣腕弁護士も圧倒的な「キャラ立ち」で、「世紀の戦い」にふさわしいスケールの大きさを感じさせます。
英メディア・インディペンデントによると、MGN側の弁護士アンドリュー・グリーン氏は、「beast in court」(法廷の獣)の異名を持つ凄腕で、特に「a fearless cross-examiner」(恐れを知らない尋問者)として、パンチの効いた攻撃的な法廷スタイルで知られている、とか。
グリーン氏は、裁判の直前に行われたインタビューでも、「tear his case to shreds」(ヘンリー王子の訴訟を粉々にしてやる)と語ったそうですから、「法廷の獣」ぶりは健在のようです。
対するヘンリー王子側の弁護士、デヴィッド・シャーボーン氏もキャラの「強烈さ」では負けていません。シャーボーン氏は、ダイアナ元妃やポール・マッカートニー、マイケル・ダグラスらをクライアントにもつ「セレブ御用達」弁護士として知られており、王子と仲がいいとされるエルトン・ジョンも彼のクライアントの一人です。
メーガン妃と共に、エルトン・ジョン一家とフランスでバカンスを過ごしているときに会い、彼から自分の弁護士を雇うように勧められたそうですから、出会い方からしてゴージャスです。
シャーボーン氏は、これまでも英タブロイド紙と何度か対決をしてきました。勝ったり負けたり、ケースによって勝敗は異なるようですが、少なくとも「英タブロイド紙ビジネスの裏表」に一番詳しい人物の一人であることは間違いなさそうです。
「法廷の獣」と「セレブ御用達」弁護士の対決に、どういった判決が下されるのか。これまでの報道を見る限り、スキャンダラスな王室ネタはあまり報じられていません。その理由として、ヘンリー王子が法廷で、淡々と自身の苦悩を語る戦略を取っていることがあげられます。
複数のメディアが、当初は「法廷の獣」ことグリーン氏の激しい追及に緊張したり、不快な様子を見せたりしていたヘンリー王子が、セッションが進むにつれて自信を取り戻して、グリーン氏と衝突し、自ら質問を返すほどになった、と報じています。
また、英紙ガーディアンは、ヘンリー王子が「王家のルールを書き換えた」とする、好意的な見解を掲載しています。同紙は、38歳の王子が王室を離脱した理由の一つは、王室のモットーである「不平を言わず、説明しない」に従うことができなくなったから、と分析。
「公の場で興味深いことは何も言わない」というルールをヘンリー王子がすべて捨て去ったことに対して一定の評価をしつつ、「彼が向かう先は、誰も予測することができない」と結んでいました。
英タブロイド紙に代表される「過剰な取材」は、何度も社会問題になってきました。ヘンリー王子の「王室ルール破り」が、今後の英メディアに影響を与えるとしたら、まさに歴史的なできごとになることでしょう。
それでは、今週の「ニュースな英語」は、「tear to shreds」(ずたずたに引き裂く)を使った表現を紹介します。
The critics tore his performance to shreds
(評論家たちが、彼の演技をぼろくそにけなした)
My trousers were torn to shreds when I fell off my bike
(バイクから転んで、ズボンがボロボロに破れた)
尋問を終えて、弁護士から証言の経験について尋ねられたヘンリー王子。涙をこらえるような長い沈黙の後、「It's been a lot」(とても大変だった)と答えたそうです。メディアに共感が広がるなか、たとえ裁判に負けたとしても、ヘンリー王子が得るものは案外大きいかもしれません。「セレブ御用達」弁護士の戦術に、脱帽です。(井津川倫子)