F1は新技術開発の「孵卵器」 電動化の技術開発を促したい狙い
今回の復帰の理由について三部社長は「小型軽量モーターや高性能車載電池の開発から得られる知見は、量産電動車の競争力に直結する可能性を秘める」と述べた。
もともと、F1は自動車メーカーにとって、新技術開発の「孵卵器」という側面がある。ホンダの場合、最初の参戦(1964~68年)の延長上に、1970年代、厳しい米国の排ガス規制をクリアする画期的なエンジン「CVCC」の開発につなげたことは有名だ。
今回の復帰も、同様の狙いがある。
F1は2030年に温暖化ガス排出の実質ゼロ(カーボンニュートラル)を目指し、26年からPUなどに関する規定を刷新した。出力に占める電動モーターの割合を従来の2割から5割に高め、内燃機関と半々にするとともに、バイオマス由来など再生燃料の使用割合も増やすといった内容だ。
つまり、モーターやバッテリーなどを制御する技術の重要性が増すということで、ホンダはEVの技術につながると判断した。
そもそも、2020年に撤退を決めたのも、新型コロナ禍による業績不振で、「金食い虫」のF1への社内の風当たりが強まったためといわれ、F1へのホンダの思いは生き続けていた。
社内の若いエンジニアの間では、F1復帰を熱望する声が絶えなかったという。レッドブルとのかかわりを維持してきたことは、経営陣も復帰のチャンスをうかがっていたことの証だろう。