「1円スマホ」といった携帯電話端末の極端な安売りの締め出しに総務省が動いた。有識者会議に新たな規制案を示し、今夏のうちに内容を決める方針だ。
これまでの対策でキャリア(通信事業者)間の乗り換えが自由になる一方、顧客獲得競争は相変わらず熾烈を極めるなかで、過剰な値引きが問題になっていた。
どんな仕組みになるのだろうか。そして、どんな問題があるのだろうか。
回線契約とセットで、端末の割引を最大4.4万円とする案で検討
総務省が2023年5月30日、携帯電話の販売ルールを議論する「競争ルールの検証に関するワーキンググループ」で、規制の方向性を示した。
回線契約とセットで端末を販売する際、端末の割引を税込み最大4万4000円に制限することが柱だ。
これには、少し説明が必要だ。現在の制限は2万2000円となっていて、一見すると割引額の「倍増」と受け取れそうだが、目指しているのは法外な値引きの規制と併せて実施するもので、単純に割引が拡大するというわけではない。
これまでの経緯を振り返っておこう。2019年に電気通信事業法が改正され、「1円スマホ」などの過度な割引に規制が設けられた。回線契約とセットで端末を売る場合に、値引きは税込み2万2000円を上限とした。
これにより、キャリアの間の値引き合戦は一時、影を潜めていたが、2021年くらいから再燃した。
実際の販売代理店の現場では、どうなっているのか――。
たとえば10万円の端末を、7万7999円値引きして2万2001円とし、そこから回線とセットの値引き上限の2万2000円を引いて「1円スマホ」になるといった具合だ。
こうしたやり方自体は違法ではないが、端末だけの購入はキャンペーンの割引対象ではないため、端末だけを2万2001円では買えず、10万円になる――というケースもある。
そして、回線契約の有無での差別は違法だ。総務省の覆面調査でも、こうした事例が多数確認され、端末だけの販売を拒否するケースもあったという。
ようは、回線契約を前提に、実質的に法定限度を超えた値引きが横行しているのだ。