数学の分析上、過去最高値の3万8915円も夢ではないが...
ところで、日本株はどこまで上昇するのだろうか。
数学的分析から「過去最高値の3万8915円87銭への戻りが視野に入ってきた」と指摘するのは、三井住友DSアセットマネジメントのチーフマーケットストラテジスト市川雅浩氏だ。
市川氏がリポート「テクニカル分析上は過去最高値までの戻りが視野に入った日経平均株価」(6月6日付)のなかで用いた分析手法は「フィボナッチ・リトレースメント」と呼ばれるものだ。
株式相場では、直線的に上昇や下落を続けるわけではない。上昇中に反落したり、下降中に反発したりを繰り返しながらトレンドを形成する。
そこで、相場が反転(反落)した場合、戻り(押し)の目安を見るうえで、どの水準が価格の転換点になるかを数学で分析するのが、「フィボナッチ・リトレースメント」だ。
高校の数学で勉強した、自然界で最も安定した比率である「フィボナッチ比率(黄金比)」を覚えている人もいるだろう。高値(安値)から安値(高値)までの下げ幅(上げ幅)から、「フィボナッチ比率」の23.6%、38.2%、50.0%、61.8%、76.4%戻した(押した)水準を転換の目安と考える。
今回、重要なのはそのうち「76.4%」の比率だ。
実は、日経平均株価では過去最高の「戻り」(61.8%)である2万6745円を2020年12月に達成している。残る目標は「76.4%」の3万1396円だったからだ。
市川氏は日経平均株価のフィナボッチ・リトレースメントのグラフ【図表2】を示しながら、こう説明する。
「日経平均の過去最高値は1989年12月29日の3万8915円87銭、過去最安値は2009年3月10日の7054円98銭です。この下げ幅(3万1860円89銭)から、『フィボナッチ・リトレースメント』で目安とされる『76.4%戻し』は3万1396円70銭で、ここが1つの上値目途でした」
「ただ、日経平均は6月2日の終値(3万1524円22銭)で、この水準を超えたため【図表2】、過去最高値までの『100%戻し』(全値戻し)が視野に入りました」
ということは、過去最高値である3万8915円87銭までいくということか。市川氏によると、計算上、そこに到達する時期は2026年6月末~2028年3月末あたりになる。かなり先だ。そして、こう結んでいる。
「これは長期上昇トレンドの継続を仮定した1つの目安ですが、長期上昇トレンドは日銀の異次元緩和に起因する『金融相場』に支えられている面も大きいため、日銀の政策変更時には特に注意が必要です。
ただ、ここから先、国内企業の資本効率改善と稼ぐ力が高まっていけば、金融相場にかわって『業績相場』が長期上昇トレンドを支え、日経平均の過去最高値までの全値戻しに対する期待が続くことも想定されます」
やはり、ここでも日本銀行がカギを握っているようだ。(福田和郎)