「賃上げが一部企業だけでは、年内に実質賃金がプラスに転じるのは難しい」
今回の結果をエコノミストはどう見ているのか。
ヤフーニュースコメント欄では、第一生命経済研究所首席エコノミストの永濱利廣氏が、
「今回の毎月勤労統計は、植田日銀が金融政策判断に賃金動向を重視するスタンスを示したことに加え、当初は30年ぶりの賃上げ効果が反映される初の賃金統計公表ということで注目されていました。
しかし、実質賃金が依然として大幅マイナスとなったことで、日銀の早期政策修正を期待していた一部の市場関係者には期待外れの結果になったといえるでしょう」
と解説。そのうえで、
「とはいえ、まだ30年ぶりの賃上げ効果が十分反映されていない可能性もありますが、そもそも統計精度に限界がある毎月勤労統計でマクロ賃金の動向を把握することには限界があると思います」
と、統計のあり方そのものに疑問を呈した。
同欄では、三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部 主席研究員の小林真一郎氏が、
「今年の春闘の結果が反映されることで注目された賃金上昇率ですが、現金給与総額(1人当たり賃金)で前年比1.0%増と、3月の同1.3%増から伸びが鈍りました。 ベースアップに連動する一般労働者の所定内給与では、3月の同1.1%増から1.4%増に拡大しましたが、伸びは小幅です。速報値であり、また賃金改定に時間がかかる企業もあると考えられるため、今後、伸び率が高まってくる可能性はありますが、春闘によって高まった賃上げムードが、やや後退した形となりました」
と、「賃上げ効果」に冷や水を浴びせる結果だと指摘。そのうえ、
「さらに、実質では前年比3.0%減と、先月の同2.3%減から落ち込みが大きくなっています。賃金上昇が一部の企業にとどまり、労働者全体への波及が限定されるようであれば、年内に実質賃金がプラスに転じることは難しいと考えられます。しばらくは、コロナの感染収束に伴って個人消費は増加が見込まれますが、実質賃金のマイナスが続けば、いずれ息切れする懸念があります」
と、今後の日本経済のゆくえに懸念を示した。