あれ、「歴史的な春闘の賃上げ効果」はどこへいったのか?
厚生労働省が2023年6月6日に発表した4月分の毎月勤労統計(速報)で、物価を考慮した働き手1人あたりの「実質賃金」が、前年同月よりも3.0%減った。減少は13か月連続だ。
今年の春闘では、30年ぶりの高い賃上げ率を誇り、その「成果」が4月の実質賃金上昇に表れると期待するほうが甘かったのか。エコノミストの分析を読み解くと――。
「春闘の影響がすべて反映されるまで数か月かかる」
厚生労働省が6月6日に公式サイトに公開した「毎月勤労統計調査 令和5年4月分結果速報」(全国の従業員5人以上の事業所3万2742箇所が対象)や報道を見てみよう。
それらをまとめると、「名目賃金」にあたる、基本給や残業代などを含めた1人当たりの現金給与総額は、前年同月より1.0%増の28万5176円だった。このうち、基本給などの所定内給与は1.1%増の25万3855円、残業代などの所定外給与は0.3%減の1万9699円だった。
現金給与総額を、就業形態別にみると、フルタイムの一般労働者が1.1%増の36万9468円、パートタイム労働者が1.9%増の10万3140円だった。
一方、4月は消費者物価指数が4.1%増と、3か月ぶりに4%を超えて、名目賃金の伸びを大きく上回った。このため、実質賃金指数は2020年を「100」とすると、「84.5」(3.0%減)となった【図表1】。これは、13か月連続のマイナスだ。
いったいどういうことか。今年の春闘の賃上げ率は(連合集計、6月1日時点)3.66%増と、「30年ぶりの高水準」になったはずではなかったのか。
朝日新聞(6月7日付)などによると、「賃上げは4月から本格化するものの、実際に実施する時期は企業によってばらつきがある。春闘の影響がすべて反映されるまで数か月かかる見通しだ」(厚生労働省の担当者)とのコメントがあった。