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電気自動車(EV)の蓄電池を活用し、再生エネルギー生かす

   「週刊エコノミスト」(2023年6月13日号)の特集は、「電力が無料になる日」。本当にそんなことが可能になるだろうか?

   カギになるのは、電気自動車(EV)の蓄電池を活用するエネルギーだという。大型蓄電システムとして系統(送配電網)につなげる取り組みが始まった。

   住友商事はこの夏、北海道千歳市で約700台のEV電池を使い、出力6000キロワット、容量2万3000キロワットの大型蓄電所として北海道電力の送電網に接続する。

   EVシフトを本格化したトヨタ自動車は、東京電力ホールディングス(HD)と提携し、新品のEV電池を大型蓄電システムとし、送電網につなぎ、再エネの電力を有効活用する実証を始める。

   NTTも、電力子会社NTTアノードエナジーが東京電力と中部電力が折半出資する日本最大の発電会社JERAとともに、200万キロワット規模の再エネ会社グリーンパワーインベストメントを3000億円で買収し、再エネ電源を確保する。NTT、東京電力、トヨタ自動車3社のエネルギー提携が進みそうだ。再エネという燃料費のかからない究極の国産エネルギーを、電池を活用して使い倒すことは夢ではない。

   日本総研創発戦略センター・シニアスペシャリストの瀧口信一郎氏は、「EV電池の送電接続こそが日本の生きる道だ」と提案している。

   日本はこれまでEVにためた電力を住宅に供給する「ビークル・ツー・ホーム」で他国に先駆けて取り組んできたが、今後はさらに昼間にためた電力を夜間にグリッド(送配電網)へと供給する時代が来る、と予想する。

   ドイツでは、再エネを消費地に送電するため、EV蓄電池を「調整弁」にして、風力発電が盛んな北部と電力需要が多い南部の地域格差の解消を目指している。日本企業にとってもビジネスチャンスになる、と日本貿易振興機構(JETRO)ミュンヘン事務所長の高塚一氏がリポートしている。

   日本で最も再エネの普及が進む九州電力のエリアでは、作りすぎて送電網で受け入れられず、出力制御という形で捨てられた電力が200億円に達したという。

   こうしたムダを全国で減らすと同時に脱炭素を達成しようという動きに光明を見たような気がする。(渡辺淳悦)

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