コロナ禍で進んだお寺離れ
「週刊東洋経済」(2023年6月10日号)の特集は、「宗教 消滅危機」というショッキングなタイトル。コロナ禍で葬儀が簡素化し、一気にお寺離れが進んだという。消えゆく寺、墓、葬儀の最新事情を追っている。
新型コロナウイルスの流行により、世間体を気にして葬儀を出していた人たちが、葬儀は出さない、という選択肢を取り始めたという。通夜を省いた「一日葬」や、僧侶を呼ばない「直葬」を選ぶ人まで出てきている。
公益財団法人全日本仏教会と大和証券による「仏教に関する実態把握調査(2022年度)報告書」の興味深いデータを紹介している。
それによると、自分の葬儀をどのように執り行いたいかを尋ねた質問に対し、「普通の葬式」が53.9%、「一日の葬式」が20.1%、「僧侶付きの火葬のみ」が4.1%、「僧侶を呼ばない火葬のみ」が20.9%という、驚きの内容だ。
新型コロナウイルスの影響を受けたのは寺ばかりではない。より深刻なのが、葬儀業界のようだ。葬儀の簡素化が進み、平均単価はコロナ前2019年の約134万円から21年には約112万円まで落ち込んだ、と同誌は推計している。
感染が終息しても、「コロナ前の水準には戻らないのでは」という業界の悲観論を取り上げている。すでに長期傾向として「葬儀の小規模化」と「競争の激化」が進んでいたからだ。
「家族葬」が一般的になり、ごく親しい人も含めた20人前後が大半だという。さらに、ネット系サービスが価格破壊を起こし、低価格スパイラルに陥っている、と指摘する。
そもそもネット業者は、自社が葬儀を行うわけではない。提携する葬儀業者に施行を委託し、葬儀業者から仲介手数料を得るというビジネスモデルだ。その手数料は葬儀費用の3割といわれる。
火葬式で「遺族の面会はできないことにしてくれ」と葬儀業者から言われるスタッフ派遣業者の声を紹介している。面会室を使えば、追加料金が発生するからだ。このような最低限の費用まで削ろうとする業者がいるのは、集客力の乏しい零細業者が多いからだと見ている。
思えば、評者もコロナ禍により、法事を執り行うことができなかった。その後、寺との距離感は広がったような気がする。さまざまな社会変動を乗り越え、社会のニーズをくみ取ってきた仏教。「必要とされる寺であるために、何をすべきか」と特集は問い直している。