「今どきPDCAなんて古いですよ!」目標未達チームの改善に不平を言う部下...どう対応する?【上司力を鍛えるケーススタディ CASE30(前編)】(前川孝雄)

全国の工務店を掲載し、最も多くの地域密着型工務店を紹介しています

   「前川孝雄の『上司力(R)』トレーニング~ケーススタディで考える現場マネジメントのコツ」では、現場で起こるさまざまなケースを取り上げながら、「上司力を鍛える」テクニック、スキルについて解説していきます。

   今回の「CASE30」では、「今どきPDCAなんて古いですよ!」と、目標未達チームの改善に不平を言う部下に悩むケースを取り上げます。

「今どきPDCAなんて古いですよ!」

【A課長】全社の期間業績目標が未達で、また本部から新たなお達しが出ただろう...。
【B課長(同期の同僚)】ああ...。「各課でもっときちんとPDCAを回すように、プロセス管理をしっかりやれ」ってね。言うは易しだが、現実はそう簡単じゃないんだ!
【A課長】そうは言っても無視できないだろう。今日うちのチーム会議で「PDCAサイクルをもう一度見直そう」と話したんだ。そうしたら、あるベテラン部下に「課長、いまどきPDCAなんて古いですよ! もうOODA(ウーダ)ループの時代です」と反論されてさ。若手らはキョトンとするし、弱ったよ。
【B課長】何だ、いったいその「ウーダなんとやら」ってのは?!
【A課長】実は、俺もわからなかったけど、そうも言えん。それで「まあ、そうかもしれんが...しかし目標達成は大事だからな...」と答えて、その場を切り抜けたよ。
【B課長】ハハハ! 君にしては、ずいぶん弱気じゃないか~。「何をウーダ、ウーダ言ってんだ! まずはきちっと数字出してからにしろ」と、きつく言ってやればよかったのにな!
【A課長】おっ、うまい切り返しだな。しかし、オヤジ・ギャグ言ってる場合じゃないだろ~。
【A課長】そうだよな~。ホント頭痛いよな~!(明日のウチの会議ではPDCAどう進めよう?!)

知ってはいても...実行が伴いにくいPDCA

   PDCAは、Plan(計画)、Do(実施)、Check(確認)、Action(改善)の頭文字をとったもの。このサイクルを意識的に回すことで、仕事の改善を着実に進めていく手法です。

   日々の仕事の管理から、週間、月間、四半期、年間などのサイクルで活用できる、業務遂行の基本ツール。報連相などと同様、代表的なビジネス・ワードとしてご存じの方が大半でしょう。

   とはいえ、実際に適宜、適切に回せているかは別問題。年間事業計画や年次報告の時期にP(計画)やC(確認と報告)には取り組むものの、日常業務や仕事の節目ごとに、4つのフェーズをしっかり回せているかといえば、忙しさにも紛れ覚束ないものではないでしょうか。

   場合によっては、ひたすらD(実行)を繰り返しているだけの場合も。ことに、職務経験の浅い若手社員が自ら習慣化するのは難しく、上司や先輩の支援が欠かせません。

   そこで、本稿では特に、若手の部下が自分自身の仕事のPDCAサイクルを自己管理できるようにするには、どのようなマネジメントが求められるのか。そのポイントを押さえていきましょう。

PDCAか、流行りのOODAにするか?

   では、PDCAの基本をおさらいしておきましょう。

   まずスタートは、仕事の進め方について仮説を立てて計画を立案すること(P)。その計画に沿って、効果的に仕事を進めること(D)。仕事の成果を振り返り、成果が上がっているか、課題は何かを検証・確認すること(C)。その結果を踏まえ、必要な軌道修正や改善策を考え、次の仕事に活かすこと(A)。これを循環させるのが、PDCAサイクルです。

   なお、近年は「PDCAサイクルから、OODAループへ」といわれる風潮もあります。

   OODAとは、Observe(観察)、Orient(状況判断、方向づけ)、Decide(意思決定)、Act(行動)の略。この4ステップを繰り返すのがOODAループ。各現場での自律的で迅速な状況把握と、判断・実行が特徴の手法で、変化の激しい現代向きとも言われます。

   しかし、OODAループは経験値がある個人やチームでこそ効果が上がる手法。若手社員や、目標未達が続き成果が上がらないチームでは、まず基本であるPDCAをしっかり実行し、その回転スピードを上げることが肝心です。

   そのうえで、次のステップとしてD=実行のなかにOODAループを適宜組み込みながら、併用するのが妥当でしょう。

週次ミーティングや育成面談などの機会を活用する

   若手社員のPDCAを的確に回すことへの支援は、上司と部下との週次ミーティングや、四半期や半期ごとの育成面談などの機会に進めていくとよいでしょう。これらの場で意図的にPDCAサイクルに取り組むための時間を取り、若手社員と一緒に計画や振り返りを進めていきましょう。特に上司・先輩が意識して関わるべきは、P(計画)とC(確認)の部分でじっくりと相談に乗ることです。

   P(計画)では、仕事の目的やチームの目的を意識させながら、自身の仕事を計画させます。その際に、「こう考えるべき」「こう計画すべき」と、初めから指示することは控えましょう。計画にあたりどんな視点が大切か、どのような要素を考慮すれば良き計画となるか。部下本人がより広く、深く考えるためのヒントを与えることです。

   C(確認)では、成果・成功とミス・失敗の両方を振り返らせます。何を意図して行ったのか。その結果、なぜうまくいったのか。また、なぜうまくいかなったのか。それらの要因を振り返らせ、すぐに改善すべきアクションは何か。また、次のサイクルのP(計画)に取り上げ、さらに進めるべき内容は何か。振り返りの結果を、次の行動につなげさせるのです。

   こうしたPDCAの支援にあたり、さらにどのようなポイントに留意すべきか。<「今どきPDCAなんて古いですよ!」目標未達チームの改善に不平を言う部下...どう対応する?【上司力を鍛えるケーススタディ CASE30(後編)】(前川孝雄)>で、より具体的に解説していきましょう。

※「上司力」マネジメントの考え方と実践手法についてより詳しく知りたい方は、拙著『部下全員が活躍する上司力 5つのステップ』(FeelWorks、2023年3月)をご参照ください。

※「上司力」は株式会社FeelWorksの登録商標です。


【プロフィール】
前川 孝雄(まえかわ・たかお)
株式会社FeelWorks代表取締役
青山学院大学兼任講師、情報経営イノベーション専門職大学客員教授

人を育て活かす「上司力」提唱の第一人者。リクルートを経て、2008年に管理職・リーダー育成・研修企業FeelWorksを創業。「日本の上司を元気にする」をビジョンに掲げ、「上司力研修」「50代からの働き方研修」「eラーニング・上司と部下が一緒に学ぶ パワハラ予防講座」「新入社員のはたらく心得」などで、400社以上を支援。2011年から青山学院大学兼任講師。2017年働きがい創造研究所設立。情報経営イノベーション専門職大学客員教授、一般社団法人 企業研究会 研究協力委員、一般社団法人 ウーマンエンパワー協会 理事なども兼職。連載や講演活動も多数。
著書は『50歳からの逆転キャリア戦略』(PHP研究所)、『「働きがいあふれる」チームのつくり方』(ベストセラーズ)、『コロナ氷河期』(扶桑社)、『50歳からの幸せな独立戦略』(PHP研究所)、『本物の上司力~「役割」に徹すればマネジメントはうまくいく』(大和出版)、『人を活かす経営の新常識』(FeelWorks)、『50歳からの人生が変わる 痛快! 「学び」戦略』(PHP研究所)等30冊以上。最新刊は『部下全員が活躍する上司力 5つのステップ』(FeelWorks、2023年3月)。

姉妹サイト