米債務上限問題、解決後が怖い「リーマンショック級の金融不安?」...エコノミストが指摘「米国債発行の津波が、銀行破綻のリスクを高める理由」

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米政府の大幅な支出削減が、景気後退のリスクを高める

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債務上限法に署名したバイデン大統領(ホワイトハウス公式サイトより)

   もう1つ、米政府の大幅な支出削減の面から、債務上限問題解決後の景気後退に懸念を示すのが、野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏だ。

   木内氏のリポート「米下院が債務上限法案を可決し上院に送付:歳出抑制は米国景気後退リスクを高めるか」(6月1日付)によると、可決された債務上限法の削減内容は、「2024年度から2033年度の10年間に裁量的歳出は1兆3318億ドル抑制される」というものだった。

   そこから、米経済に与える影響をこう試算した。

「この場合、裁量的歳出抑制のGDP押し下げ額は8434億ドルとなる。これは年間名目GDPの3.31%となる。2024年度、つまり2023年10月から裁量的歳出抑制が始められると、初年度の成長率は0.33%押し下げられる計算だ」
「これだけで米国経済が一気に悪化するわけではないが、大幅利上げ、銀行の貸出抑制によって強い逆風を受けている米国経済が、今年後半から来年初めにかけて景気後退に陥る確率を高めることに寄与するだろう」
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米国連邦議会議事堂

   ただし、必ずしもマイナスばかりではない。

「他方、米国は引き続き物価高騰に見舞われている。現時点では、FRBの金融引き締めによって物価の安定回復が図られている状況だ。しかし、バイデン政権の積極財政が物価高騰の一因であるとすれば、緊縮的な財政政策によって、物価安定回復に向けた金融政策の負担を一部引き受けることは、正しいポリシーミックスとも言えるのではないか」
「金融引き締めだけに頼る物価高対策には、行き過ぎた金融引き締めが経済を抑制するだけでなく、金融市場の大きな調整を引き起こし、金融不安の引き金となってしまうリスクがあるからだ」

(福田和郎)

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