コロナ禍で人気が広まったペットブームは今後、どうなるのか。
東京商工リサーチ(東京都千代田区)が2023年5月23日に発表した2022年「ペット・ペット用品小売業」業績調査によると、国内のペット・ペット用品小売り業全体の売上高は2906億7700万円と増収となったが、最終利益合計は62億5400万円と減益に転じていることを明らかにした。
同社では「円安でペットフード原材料やペット用品の価格が上昇、電気代高騰も直撃するなか、価格転嫁の難しさが足かせになっている」という。
仕入価格や電気代の高騰などのコスト増が厳しく
この調査は、東京商工リサーチの企業データベースから日本標準産業分類の「6096 ペット・ペット用品小売業」を集計対象として、単体決算で最新期を2022年1~12月期とし、4期連続で売上高が比較可能な337社(最終利益は129社)を対象に抽出、分析したもの。
なお、「6096 ペット・ペット用品小売業」とは主に犬、猫、小鳥、熱帯魚などの愛がん動物自体とペットフード、トイレシートやおもちゃなどペット用品を小売する事業者を指している。事業例としては、ペットショップ、愛がん用動物小売業、観賞用魚小売業、ペットフード小売業などがある。
はじめに、ペット関連337社の2022年の売上高合計は、2906億7700万円となり、前年比で「6.5%」増となった。2020年から増収が続き、2022年は2019年の2233億7300万円から1.3倍に拡大している。
一方で、増収率は2020年が前年比8.4%増、2021年が同12.6%増と増加幅が拡大したが、2022年は同6.5%増と拡大幅が縮小してきている。
つぎに、2022年の最終利益合計を見ると、62億5400万円(前年度比8.2%減)という結果になった。コロナ禍前の2019年と比べ、最終利益は2.9倍と大きく増加した。
増益率は、2020年に前年比「105.9%」増で大幅増となったが、2021年は同「57.0%」増と縮小し、2022年は一転し前年比8.2%減と減益になった。
同社では、
「ペット需要の高まりで、売上高は伸びているが、仕入価格や電気代の高騰などのコスト増で、直近決算は減益と厳しさをみせている」
と分析する。
続いて、ペット小売り産業の2022年の売上高伸長率をみると、増収企業は244社(構成比72.4%)に対し、減収企業は93社で「27.5%」にとどまったようだ。
2022年とコロナ禍前の2019年の売上高を比較すると、増収企業は214社(同63.5%)だったが、「増収率10%以上」が108社と「32.0%」だったのに対し、「減収率10%超」は82社と「24.3%」を占め、売上高の二極化が鮮明となった。
同社の説明では、
「豊富な品揃えを誇る資本金1億円以上の大手は、7社中6社(同85.7%)が増収率10%以上だった。低価格志向・高級志向など様々な消費者ニーズに対応できるかで、売上高の伸びに差が出ているようだ」
としている。
アフターコロナを見据えた新たなビジネスモデルへの転換が必要なタイミングか
さらに、2022年の増益企業率は「37.2%」で、減益企業率の「29.4%」を7.7ポイント上回っている。
増益企業率の推移をみると、2020年の「32.5%」から2021年は「39.5%」に上昇した。コロナ禍でペット需要が高まり、増益企業が増えた。
しかし、2022年は「37.2%」と、2021年から2.3ポイント低下した。売上高の伸び以上に、仕入価格や電気代などの上昇のコスト負担が大きいことを示しているようだ。
また、ペットの手放しの問題について同社では、
「環境省自然環境局によると、動物愛護センターや保健所に引き取られた犬・猫は、2019年度の8万5,903頭から2021年度(最新)は5万8907頭に減少した。
これはコロナ禍でのリモートワークなどによるペットと人との関係性の強まりや、動物愛護団体の働きかけなどがあるとみられる」
と指摘した。
こうした流れから、コロナ感染症の落ち着いた今後は出社勤務の広がりなどから、飼い主がペットと過ごす時間は減少。そして、ペットの世話を負担に感じてペットを手放すことを検討する飼い主の増加が懸念されるという。
ペット小売り産業の今後について同社は次のように総括した。
「コロナ禍でペットを飼い始めた人が増え、ペットやケージ、トイレなど基本用品の需要が活発だった。今後はこうした需要は減少し、自動給餌器などの飼育自動化用品やペットホテルなど、飼育負担を軽減する製品・サービスが新たな主力市場になる可能性が見えてきた。アフターコロナを見据えた新たなビジネスモデルへの転換が必要なタイミングかもしれない」